2020年8月4日火曜日

チャノマ

一入亭の修理をはじめて三十年近くたちます
なかなか進まなくてお見せできるところはまだほとんどありません
チャノマには余計なものが置いて無いのでお見せしても構わないかと

チャノマというのは古民家の用語のひとつです
中門造りの一入亭では建物の中央にあります
囲炉裏があって屋内生活の中心になるスペースでした


失われていた囲炉裏を復活しました
囲炉裏の上に吊るす火棚を作りました
天井を取り払い、松の丸太梁が見えるようにしました
床の畳を取り払い、杉板を張って柿渋を塗りました
襖紙を張り、そこに老子のことばを書きつけました
北側の壁を打ち抜いて障子窓を取り付けました
囲炉裏は火が恋しくなる時節までお休み中です


2020年7月28日火曜日

『老子道徳経』抄

老子道徳経抄 一入亭

 上善若水、水善利万物而不争、処 
衆人之所悪。故幾於道。居善地、心 
善淵、与善仁、言善信、正善地、事 
善能、動善時、夫唯不争、故無尤。 

 上善は水のごとし、水は善く万物を利して争
わず、衆人の悪む所に処る。故に道にちかし。
居るは善く地、心は善く淵、与うるは善く仁、
言は善く信、正すは善く治、事は善く能、動く
は善く時。それただ争わず、故に尤なし。


 知人者智、自知者明。勝人者有力、
自勝者強。知足者富、強行者有志。 
不失其者久。死而不亡者寿。

 人を知る者は智、みずから知る者は明。人に
勝つ者は力あり、みずから勝つ者は強。足るを
知る者は富む、強を行う者は志あり。そのとこ
ろを失わざる者は久し。死して亡びざる者は寿
し。


 名与身孰親。身与貨孰多。得与亡 
孰病。是故甚愛必大費、多蔵必厚亡。
知足不辱、知止不殆。可以長久。

 名と身とはいずれか親しき。身と貨とはいず
れか多なる。得と亡とはいずれか病なる。この
故にはなはだ愛すれば必ず大いに費え、多く蔵
すれば必ず厚く亡う。足るを知れば辱しめられ
ず、止まるを知れば殆からず。もって長久なる
べし。


 知者不言、言者不知。塞其兌、閉 
其門、挫其鋭、解其紛、和其光、同 
其塵。是謂玄同。故不可得而親、不 
可得而疏。不可得而利、不可得而害。
不可得而貴、不可得而賤。故為天下 
貴。

 知る者はいわず、いう者は知らず。その兌を
塞ぎ、その門を閉じ、その鋭を挫き、その紛を
解き、その光を和し、その塵に同じうす。これ
を玄同という。故に得て親しむべからず、得て
疏んずべからず、得て利すべからず、得て害す
べからず。得て貴ぶべからず、得て賤しむべか
らず。故に天下の貴となる。


 善為士者不武、善戦者不怒。善勝 
敵者不与。善用人者為之下、是謂不 
争之徳、是謂用人之力、是謂配天之 
極。

 善く士たる者は武ならず。善く戦う者は怒ら
ず。善く敵に勝つ者は与わず。善く人を用うる
者はこれが下となる。これを不争の徳といい、
これを人の力を用うといい、これを天下の極に
配すという。


 吾言甚易知、甚易行。天下莫能知、
莫能行。言有宗、事有君。夫唯無知、
是以不我知。知我者希、則我者貴。
是以聖人被褐懐玉。

 わが言は甚だ知りやすく、甚だ行ないやすし。
天下よく知ることなく、よく行なうことなし。
言に宗あり、事に君あり。それただ知ることな
し、ここをもってわれを知らず。われを知る者
は希なれば、われに則る者は貴し。ここをもっ
て聖人は褐を被て玉を懐く。


 信言不美、美言不信。善者不弁、
弁者不善。知者不博、博者不知。聖
人不積、既以為人己愈有、既以与人
己愈多。天之道、利而不害、聖人之
道、為而不争。

 信言は美ならず、美言は信ならず。善なる者
は弁ぜず、弁ずる者は善ならず。知る者は博か
らず、博き者は知らず。聖人は積まず、既くも
って人のためにして己いよいよ有し、既くもっ
て人に与えて己いよいよ多し。天の道は、利し
て害せず、聖人の道は、なして争わず。

2020年7月14日火曜日

『超高齢社会のリアル』 鈴木隆雄

<老いと障害の発生>
移動能力あるいは歩行能力の障害⇒排泄障害⇒摂食障害

<歩行速度と寿命の関係>
歩くことは人の健康を維持するために重要な能力なのです
早く歩ける人は統計的に見て健康寿命が長いのです
ゆっくりしか歩けなくなると人はどんどん衰えていくのです

例えば、65歳で歩行速度が遅い(<0.4m/s)場合の10年間の生存年数は男性約10年女性約15年です
最も歩行速度が速い場合(≧1.4m/s)にはほど30年、40年です
その差は一目瞭然で、歩行速度が遅いほうが、優位に生存年数が低いことが示されています

<知能の発達と老化>
知能は結晶性知能と流動性知能から成り立っていると考えられています
結晶性知能は、過去に習得した知識や経験をもとに日常生活の状況に対処する能力を支えます
流動性知能は、新しいものを学習したり覚えたりするような能力で、加齢の影響を受けやすい
豊かな知識力の反映とも言える「語彙」の能力は、学校教育後の20歳頃から一貫して向上します
そしてその能力は、結晶性知能として高齢期になっても高く維持することが可能です

<不健康寿命を延ばしてどうするの?>
いま世の中では健康寿命を延ばそうという大合唱が起きています
しかし、健康寿命はすでにかなり延びていて平均寿命に近づいてきています

    健康寿命 平均寿命  不健康期間
 男性  73歳   82歳    9年間
 女性  76歳   88歳    12年間

平均寿命をこれ以上延ばすとただ不健康な期間が伸びていくことになります
それでいいのでしょうか
よく生きよく死ぬことが大事です

<不健康寿命は短縮した方がいい>
ヒトに生命維持の障害が生じた場合、「人間」として他者を助ける美徳を持っています
こうした美徳が思いもよらぬ悲劇をもたらすこともある
ヒトは本来加齢に伴いゆっくりとした機能障害によって寿命を全うし、命を閉じるのが「掟」です
それが、本人の思いとかけ離れた他者の意思と、発達した医療技術によって「死」が延伸されてます
これは悲劇以外の何者でもありません
個人の尊厳を損なうだけでなく、費用対効果から見ても無益です
いつかは終えていく限りある命を見切る覚悟も必要です

<人の活動能力の諸段階>

 単純←――――――――――――――――――――――――――――――――→複雑
  生命維持 呼吸 不快刺激回避 疾病予防行動
  機能的  移動不能 入院 外出不能 外来通院 不自由ない 体育的能力
  健康度                    身体的行動
  知覚―  ”感覚” 知覚 知覚の 見当識 短期 蓄積 古典的  道具的  ‥
  周知          恒常性     記憶 記憶 条件付け 条件付け
  身体的  移動 食事 身づくろい
  自立
  手段的  家政 料理 家計管理 雇用
  自立
  状況   感覚器  好奇心 余暇活動 探求 創造的能力
  対応   効果器の
       移動
  社会的  感覚的な 普段の  親密な  養育 利他的 親として 創造的リーダー
  役割   個人的  つき合い つき合い    行動  の行動  シップ・愛 
       つき合い                      
 
<新活動能力指標(JST版)>
 
因子名            項目
 社  1 町内会・自治会で活動していますか
 会  2 地域のお祭りや行事などに参加していますか
 参  3 奉仕活動やボランティア活動をしていますか
 加  4 自治会やグループ活動の世話役や役職を引き受けることができますか

 新  5 携帯電話やパソコンのメールができますか
 機  6 携帯電話を使うことができますか
 器  7 ATMを使うことができますか
 利  8 ビデオやDVDプレーヤーの操作ができますか
 用

 情  9 教育・教養番組を視聴していますか
 報  10 外国のニュースや出来事に関心がありますか
 収  11 美術品・映画・音楽を鑑賞することがありますか
 集  12 健康に関する情報の信ぴょう性について判断できますか

 生  13 病人の看病ができますか
 活  14 孫や家族、知人の世話をしていますか
 経  15 生活の中でちょっとした工夫をすることがありますか
 営  16 詐欺、ひったくり、空き巣等の被害にあわないように対策をしていますか

<孤独死のリスク>
一般に「孤独死」と聞くと「可哀想」「無念」「薄情」「悲惨」といったイメージを抱きがちです
実は孤独死そのものよりも孤独死に付随する二次的な修飾要因※が問題であることが少なくありません
※孤独死に付随する二次的な修飾要因=経済問題や家族問題、そして死体変化

<認知症の早期発見と先送り>
教育期間(高等教育)、生活習慣病の管理、食事や運動、活動的なライフスタイルの確立

<運動が認知機能に対して有効性を持つ潜在的なメカニズム>
 運動器系の要因    神経系の要因     循環器系の要因
 有酸素能力の向上   神経栄養因子の増加  身体組成の適正化
 筋量・筋力の向上   神経新生       高血圧の予防と制御
 骨密度の向上     シナプス新生     脂質代謝の適正化
 体脂肪の減少     脳容量の増加     インスリン抵抗性の改善
 運動機能の向上    神経細胞死の減少   炎症マーカーのレベル低下
 転倒の減少      βアミロイドの分解   抗酸化作用
 (頭部外傷の減少)  ノルアドレナリン   毛細血管の増加
            システムの賦活    脳血流低下の減少
                       脳の酸化ヘモグロビンレベルの向上
                       脳の虚血耐性の上昇

<栄養学的視点からの予防>
いろんな食品をバランスよく食べる人ほど、認知機能の低下するリスクが低い
バランスよくいろいろな食品を食べる食習慣が脳の機能維持し、認知症を予防する可能性がある

<人生の目的を強く持つ>
人生の目的を強く持った高齢者はアルツハイマー型認知症や軽度認知障害となるリスクが低いことが報告されている
規則正しい日常生活、学習と生涯教育などの健康行動が脳の予備力を高め、認知症予防につながる可能性がある

2020年6月26日金曜日

『職人』 竹田米吉

印半纏(しるしはんてん)
半纏には二種類ある。「仕事半纏」と「通い半纏」である。通い半纏はよそいきで正装で、祝儀不祝儀には、ま新しいのを着た。大工ならよいおとくい(旦那といった)の、また棟梁の印を染めぬいた半纏を着るのを誇りとした。おとくいの屋敷に伺うときはその旦那の名入りの印半纏を着て行く。

小回り
昔は土方の専門用語で、一日にし遂げる仕事の分量を指す。彼らの賃金は規則で一定であるから、小回りは仕事の分量の指示のみですんだ。

常傭(じょうよう)
雇用形態のいかんを問わず、期間を定めず常時雇用される労働者。

2020年6月23日火曜日

蛍の光

寝る前に涼しい風に当たろうかと外に出ました
風はありませんが少し涼しいようです
月が西の山に沈もうとしています
暗がりに蛍が飛んでいます
久しぶりに光を見ました

『不便益のススメ』 川上浩司

ポーランドで民主化が成功する前夜(1980年代)の不便だった思い出を、友人は語り出しました。食料配給にまず早起きのお婆ちゃんが並び、次に学校へ行く前の自分が交代し、学校へ行く時間頃にお母さんが交代しに来るのが、毎日の日課だったそうです。今の日本ではあり得ない光景です。効率化最優先の社会では、忌避すべき状況です。ただ、ポーランドの友人は、この状況を嬉しそうに語るのです。家族の結束は、この時が一番強かったと。この時は、お婆ちゃんも僕もお母さんも、誰一人として家族からかけてはならない存在だと、みんなが思っていたんだと言っていました。

・・・

あちこちにあるコンビニ・自動販売機・夜遅くまで開いているお店に違和感があり、生きづらいと感じる。その理由を二人(著者とニュージーランドから帰国したばかりの同僚研究者)で考えてみたところ、便利が前提になっている社会は個人が不便益を得ることを許してくれないからではないかと結論しました。

・・・

不便なことだらけのわたしの自転車旅がなぜとても楽しいのかこの本を読んで考えました

「主体性」
旅のかたちは色々です
団体旅行、パック旅行、現地解散・現地集合の往復旅行、などなど。
自転車旅は家を出てから、帰ってくるまですべて自分がしたいようにする旅です
そこには不便がたくさん詰まっています

例えば自転車を入れた重たい袋を家から空港まで運ばなくてはなりません
たったこれだけのことですら時間や費用や労力のかかり方が違ういろんな方法があります
旅にまつわるそんな一切合切を自分の考えに沿ってなんとかしていくこと
それをやり遂げることが快感なのです

「工夫できる」
アムステルダムという魅力的な都市に何日も滞在して観光したいと思いました
街の中心部にキャンプ場はないしホテル代は高いです

南へ自転車で15㎞ほど走ったところにあるキャンプ場に泊ることにしました
市の中心部に自転車で行きそのままいろいろなスポットを見て回りました

中心部を往復するコースを変えただけで道沿いに面白いものをいくつも発見しました
かわいらしい跳ね橋や土地の人に人気なレストランや古い運河沿いの自転車道...

旅の最終日も自転車に乗ってしめくくりました
キャンプ場から日本へ飛行機が飛び立つスキポール空港へはわずか11㎞でした
離着陸するジェット機の下を潜り抜けて空港ターミナルまで走りました

「発見できる」
スマホを持っていないので紙の地図を頼りに道をたどり名所やキャンプ場を探しました
夕方遅くやっと見つけたキャンプ場が廃業していたこともありました。
何度何度も道を間違えました。

こんなわけで面白いところに出くわしたときの喜びや驚きはひとしおです
ライン川のレマーゲン鉄橋の博物館やドナウ川のエステルゴム大聖堂などがその例です

わからないことは現地の人に尋ねることにしています
聞かれた人たちはたいていは親切に教えてくれます

「対象が理解できる」
2017年にはライン川をアルプスの山中から北海の河口まで
2018年にはロアール川を地中海に近い中央高地から北大西洋の河口まで
そして2019年にはドナウ川をシュバルツバルトからブダペストまで

源流から河口へ向かって走ることにで広大な地域を連続的にたどることになります
こうすることその土地をより密接に感じることができ理解した気になれます

「不安がなく信頼できる」
自転車旅はエージェントを通さずに自分で企画し実践する旅です
日本から現地往復のための飛行機や列車以外は自転車で行きます

地面の上を走っていくことに困難はあっても得体のしれない不安はありません
不確かな第三者に依頼するより自分でやる方が安心も信頼も(諦めも)できます

「上達できる(飽和しない習熟)」
最初の海外自転車旅ではちゃんと日本に帰ってこられるか不安でした
その旅を毎年3年続けてそれなりに思いもしなかった楽しい経験ができました

もっといい旅ができたかもしれないと今は思います
現地の言葉や地域文化をもっと理解できるようになっていたらよかった
だからこれからはもっといい準備をして旅に出ようと思っています

「自分だけの旅を創った感」
自転車旅は自分だけのものです
自分の心と体を使いつつ出会った人と共感しながら走り続ける旅です
それを完遂したあとの喜びはとても大きいです

「能力低下を防ぐ」
自転車旅では荷物をどっさり積んだ自転車を漕ぎます
毎日毎日山坂のある初めての道を一日80㎞ぐらい走ります
目的地についたら観光したり買い物したりキャンプしたりします
このように絶えず五感五体を駆使する旅は心身をすっかりシェイプアップします

これからも自転車旅の不便をなんとかしながら自らの視野を広げていきます


2020年6月21日日曜日

写真で見る日本生活図引『村の一年』熊谷元一写真 須藤功編

日本人の生活の原点を見詰め直すための、これ以上の資料はないのではないかと思う。自動車はもとより、電燈とラジオの外に、家庭電気製品と名のつくものは何もない生活であっても、決して貧しかったわけではない、ということが伝わってくる。豊かさの初めに掲げるべき思いやりの心を、家族も村人も等しく持っている。それぞれが自分の時間を守っていることも、写真のそこかしこに読むことができる。

撮影は昭和31年6月21日から始まった。

多くの農山村がそうであるように、阿智村も、昭和30年代後半からの高度経済成長期の変動は大きかった。

昭和30年代後半から全国的な傾向になる省力による能率化、いわゆる農業の機械化である。機械化の発端と、それによってもたらされた変化は、村によってそれぞれ異なるが、ほぼ共通しているのは、機械と一緒に金を必要とする生活が農家にもはいってきたということである。むろんそれまでも金を必要としなかったわけではないが、必要最小限度にとどめ、農家が大きな経済の渦に巻き込まれることはなかった。これは、供出米の外は、自分の家で食べる食料の確保、いうならば食糧の自給のために働き、それが満たされれば十分というのが、多くの農家の営みだったからである。そこにはいってきたのが、車、テレビ、家庭電化製品、家具、服などの新しい生活用品である。これらは、供出米と繭の代金、それにわずかな雑収入だけではとてもすぐに買うことができない。しかし手に入れないと時代遅れになる。その感覚が村の変動の一つの要因となる。

夏 太陽の下の日々
農作業がほぼ自然と共にあったころには、暑い季節には暑く、寒い季節には寒くというのが農家にとっては望ましいことで、これによって作物がよく育つと考えられていた。

蚕飼い(こがい、養蚕)は、天候や生糸相場など、収入に不安定な要素が少なくないが、繭を出荷しさえすればとにかく金になるという現実は、農家にとって他に替え難いものがあった。

農家のもう一つの収入源は米である。

一つだけいえることは、汗を流すわりには、米の収入は少ないということである。これは今も変わりないが、それでも昭和30年代前半までは、少ないなりに農家は農業で生活できた時代だった。

2020年6月15日月曜日

『技術への問い』 マルティン・ハイデッガー

茅葺きはAIなどに比べれば桁違いに素朴でアナログな技術です
シンプルな技術だからこそ技術というものの本質をありありと見せてくれます

茅葺きの材料はその辺の空き地によくボウボウと生えている茅です
茅とはチガヤ スゲ ススキなど屋根葺きに使う草の総称です
この茅を使って屋根を葺く技術が茅葺きです

茅葺きの屋根は長年にわたって家を護ってくれます
夏の日差し 台風の雨風 冬場の雪に10年も20年も耐え抜く力が茅にはあります
ただの草に見える茅は屋根材として適切に使われた時に驚異的な力を発揮するのです

技術の本質は素材となる自然をいじくりまわしてそこから何かを作ることではありません
自然の中にあるいろいろな力をただこちら側に持ってくることにあるのです

2020年6月12日金曜日

『<郊外>の誕生と死』 小田光雄

1955年に始まる高度成長は、農耕社会から重工業社会へと産業構造を転換させていく過程であり、その後四半世紀のあいだに起こる「日本人の1.6倍」というドラスチックな人口移動の開始を告げるものであった。

地方から都市へ 都市人口 1890年   7.8%
             1955年 56.6%
             1975年 75.9%

郊外化
1955年以降「5年ごとに人口増加のピークが10㎞ずつ郊外化してきた」

産業構造の転換        1960年  1970年  1974年
        第一次産業   30.2   17.4   12.9
        第二次産業   28.0   35.1   36.3
        第三次産業   41.8   47.5   50.8

1973年から1975年にかけて日本の社会がモノを生産する社会からモノを消費する社会へと突入した
あらゆるものの価値や思考が生産の側から消費の側に転換した 

2020年6月10日水曜日

バイカウツギ

きれいだなあと毎年眺めていた花が今年はことのほかよく咲きました
ひかえめないい香りがします
名前を知らなかったので調べてみました
バイカウツギのようです
「夏は来ぬ」という歌が好きです
その歌い出しは「うのはなの におうかきねに」ですね
この「うのはな」はバイカウツギのことかなと思いました

2020年6月2日火曜日

マルベリー(桑の実)・ジャム

6月が近づくといつもの自転車散歩のコースに異変が起きます

ロードバイクで散歩するときは、いつも前方の路面を注視しています
タイヤが細い(幅23ミリ!)ので荒れた路面には弱いからです
溝だとか、砂利だとか、水たまりだとか
それにハマって何度転倒したことか・・・

自転車道の路面の異変は土留め色に広がる物体?
正体は桑の実です!
たわわに稔った桑の実が自重を支えきれなくなったとき自転車道に落下するのです

走るのには邪魔ですが、迷惑ではありません
これでおいしいマルベリー・ジャムを作れるからです
作り方はとても簡単です

ーマルベリー・ジャムの作り方ー
・桑の実を水を何回も替えて良く洗う
・桑の実の半分の重さの三温糖を加えて煮る
・桑の実200gにつき大さじ1杯のレモン汁を用意する
 (レモン汁は「裏わざ」で搾ると楽です)
・トロトロ(堅くなる前)の状態でレモン汁を加えて軽く煮る
・熱いうちに煮沸ずみの容器に入れる
・冷蔵庫で保存する
朝のヨーグルトにトッピングすると、しあわせが長持ちします

2020年5月27日水曜日

選択的草刈り

一入亭には草がたくさん生えます
これを刈払機で刈ります
刈ってもすぐに伸びてきます
それでひと夏のあいだに三回くらい刈ります
今日はその一回目です

草はこれまでクリーンカットしていました
すべての草をきれいさっぱりと刈ってしまうやりかたですね
草刈りといえば普通はクリーンカットだと思います
そのクリーンカットを数年前にやめました

一入亭にはいろんな草がすごくたくさん生えています
その中に可愛らしいネジ花や、食べられるフキ、薬草になるドクダミなどが混ざっています
きれいな橙色の玉ができる鬼灯(ほおずき)もたくさん生えます
いろんな草花がいろんな雑草と混在しているのです

敷地に雑草が何本生えているのかは正確には分かりません
きっと何千本、あるいは万単位でしょう
いろんな草がたくさん生えています
それ自体は好きですがボウボウに生えているのは見たくない
それで草刈りをするわけです

何年か前の春先のことです
草刈りをしているととなりのおばあちゃんがやってきました
「フキは残しておいてくんねえか。まだ柔らかくて食べられるから」と言われました
それでフキが生えているところは草刈せずにそのままにしておきました

翌年はその場所にフキがこれまで以上によく生えました
しかも生える場所が広がっているようです
フキは食べられるし、見た目も悪くないし、草刈りする面積を減らすこともできる!
こんなことがあってからフキはなるべく刈らないようにしています
これを「選択的草刈り」と名付けることにしました

2020年4月20日月曜日

回文

住まいは田舎がいい、森と日溜まりでひと寝入り、飛ぶ鳥、稲と日照り、まだ独りもいいが、家内はいます
                             秋田県 RRイオン サンの回文作品

『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン』 「認知行動療法」入門 中島美鈴


「同じ出来事を経験しても、自分とはまったくちがう反応をする人もいる」
自分の受け止め方は唯一の選択肢ではない
出来事とそれによって発生する感情との間には、私たちの物事の受け止め方、捉え方が介在しています
それが認知行動療法でいう「認知」です

「本人の受け止め方に問題はないのだろうか?」
うつ病患者は非常に偏った、悲観的な物事の受け止め方をする。
自動思考 例:俺はなにをやってもダメだ
信念(スキーマ):自分や他人、あるいは世の中といったものを解釈するときの基本的な枠組
 幼少期から思春期までの時期に、親をはじめとする身近な人との関係の中で身につけ
 その後の人生経験の中で強化されていくと考えられている
信念は誰しもが持っているもの、持っていなければならないもの
信念があまりに悲観的な方に偏っていると生きるのがとてもつらくなる
日常生活のあらゆる場面でネガティブな自動思考が起こり、必要以上に傷ついたり、落ち込んだりする

「たったそれだけの情報から、そこまで言える?」
色メガネをかけて世界を見れば、無色透明なものにも色がついてしまいます

中核信念:心の奥底に横たわっているもので、普段はなかなか意識されない
  自分は人より劣っている
  自分には価値がない
  自分は人からは好かれない
  他人は冷たいものだ
  世の中は不公平なものだ
媒介信念:いつの間にか自分に課しているルール、あるいは信条のようなもの
  価値がある人間であるためには、完璧でなければならない
  好かれるためには、人の機嫌を損ねてはならない
  私に起こる人間関係の問題は、すべて私に原因がある
  世の中は頑張っても報われないものだ

認知:信念、推論の誤り、それらの影響を受けて起こる自動思考というプロセス全体
感情:認知の結果として生じるもの

認知療法:認知を変えることにより、感情の改善を目指す

認知の歪み:悲観的な信念を強固に持っているため、非常に一面的な物事の受け止め方に凝り固まっている状態にあり、それがいつも事実以上に自分を苦しめる方に偏っている

自分がどんな信念(認知)を持っているか把握する方法
①書き出し法
冷静なときに、さまざまな場面で自分にどんな自動思考が起こっているかを思い出し、書き出してみる
②チェックリスト法
巻末参照
③下向き矢印法
セルフ・カウンセリングの場面で有効
取り組むのは何かを漠然と不安に思ったり、恐れたりして、そわそわしているときが良い
「それが事実だとしたら、どういうことになるのか?」
糸から吊るした錘がまっすぐ地球の中心に向かうように、
下向き矢印法による自問自答を繰り返していくと、その答えは自分の中核信念へと向かっていく
その過程で媒介信念にも気づくことができるかもしれない

「自分はどんな信念を持っているのか」
「自分は本当は何を望んでいるのか」
「その内容を実現させるにはどうすればよいか」

「過去は変えられない。しかし、今、自分が選択している認知と行動なら変えられる」

行動分析
悪循環に陥っているときは、問題を外在化する
外在化:抱えている問題を自分から切り離し、客観的に見られるようにすること

出来事
 ⇓
認 知 「この認知をこう変えることはできないだろうか?」
 ⇓
行 動 「この行動をこう変えたら、次に起こる出来事はどうなるだろうか?」

「推論の誤り」=「考え方のクセ」
嫌な出来事が重なって余裕がないとき、とても疲れているときに現れやすい
✖一般化のしすぎ:部分を全体に広げてしまうクセ
✖自分への関連づけ:あくまでも自分を中心として、相手側にある理由を読み解こうとする
✖根拠がない推論:何一つはっきりした根拠がない
✖感情による決めつけ:判断材料が足りないときに、自分の気分感情を拠り所にしようとする
✖全か無か思考:好きか嫌いか、味方か敵か、善か悪か、成功か失敗かで物事を考える
✖すべき思考:道徳的には正しいが、あまりにもこだわっていて、窮屈で生きづらそう
✖過大評価と過小評価:他人の成功や長所は過大に評価し、失敗や短所を見逃す
 自分の成功や長所は過小評価し、失敗や短所は実際よりも過大に考える

「推論の誤り」を自覚する意義
 自動思考から距離をとりやすくなる
 そのクセに応じた修正の方法を考えやすくなる
〇一滴のインク技法=「一般化のしすぎ」の修正法
 プールはもっと大きなものだし、そこに落ちたのは一滴のインクに過ぎない
〇理由分析グラフ=自分への関連づけ」の修正法
 「自分に関する理由」が100%を占める円グラフを描いていた自分のおかしさに気づく
〇証拠集め技法=「根拠がない推論」「感情による決めつけ」の修正法
 観察法:対象を観察することによって証拠を集める方法
 実験法:自らの行動で相手の反応をたしかめることによって証拠を集める方法
 証拠を集めた結果、嫌われていることが明らかになった場合はこう考える
「問題がはっきりした分、前進できた。次はこの問題にどう対処するか考えよう」
〇グレーゾーン技法=「全か無か思考」の修正法
 「あらゆる事象は、全でも無でもない、白でも黒でもない、グレーゾーンに位置している」
〇must→better技法=「すべき思考」の修正法
「~すべき」「~しなければならない」という部分をゆるやかな表現に変える
 例外となる場合を考えて、その言葉を付け加える
〇「もう一人の自分」技法=「過大評価と過小評価」の修正法
 自分と同じ悩みを抱え、落ち込んでいる大切な友人に客観的で温かい言葉をかけてあげる

「行動実験」
基本的には人に迷惑をかけてはならない。しかし、いつも自分の都合や気持ちを押し殺し、相手の都合や気持ちを優先させる必要は無い。時には少しくらい迷惑がかかっても、率直に自己主張する方が、相手との関係は深まりやすいものだ」

「古典的条件付け」
動物が本来持っている生理的な反応ではなく、後天的に学習された、特定の刺激によって引き起こされた特定の反応(例:唾液分泌、発汗、震え、緊張、不安、恐怖)
そこにメリットがあるかどうかは必ずしも関係ない

健全な睡眠に至る古典的条件付け=布団に入ると眠くなる
睡眠障害の治療=「本当に眠くなるまで布団に入らないこと」
 読むと眠くなる本を持ち込むのはOK
「入眠儀式」
 眠くなるまで頭を疲れさせる勉強をする
 就寝の2時間ほど前にゆっくりと入浴する
 リラックス効果のあるストレッチをする
 リラックスできる音楽の鑑賞
 アロマ浴

「オペラント条件付け」
特定の環境(これを「先行刺激」といいます)で、特定の行動を取ると、特定の結果が得られる、ということを学習し、類似した行動を繰り返すようになる
その行動を取ることにメリットがある
オペラント条件付けを解除する方法=「メリット・デメリット分析」
「むちゃ食い」
メリット 寂しさを紛らわせることができる
デメリット 太る、吹き出物ができる
「デメリットがない方法」で同じメリットを得ることができないか考える
先行刺激と報酬に着目して、ターゲットとなる行動を具体的に変えていく
 
「逆制止の原理」
ある反応が体で起っているときに、それと相反する体の状態をつくり出す
不安・恐怖⇒全身の筋肉はこわばり、呼吸は浅く、速く、動悸がして、心拍数も上がっている
リラックス⇒全身の筋肉は弛緩し、呼吸は深く、ゆったりし、心拍数も落ち着いている
不安や恐怖を感じているとき、意識的にリラックスした状態をつくり出し、不安や恐怖と拮抗させる
「漸進的筋弛緩法」=日常生活にも非常に役立つ
体の各部位に力を入れてから一気に脱力し、その脱力した感覚を味わう
両手⇒両腕⇒両肩⇒首⇒顔⇒背中
「呼吸法」
鼻から大きく息を吸う⇒丹田を持ち上げる⇒息を止める⇒苦しくなる前に口から息を吐く

「社交不安障害」の治療
他人の目を通した自己像の歪みを改善する⇒ビデオ・フィードバック
「ミミズが這うようなじ字になったとしても世界は終わらない」

皆さんはなにが好きですか?
何をしているときが楽しいですか?
どんなふうに生きたいですか?

2020年3月30日月曜日

『欲望の時代』マルクス・ガブリエル

運命というものはあるのです
誰もが運命を持っています
あなたが運命を見いだせるか否かが問題です
あなたの人生で深く意味のあること
出来事により深い意味があると思えたとき
あなたは自分自身に近づいているのです
運命は必然を意味しません
運命は自由を意味します
自分自身が自由になったときはじめて運命が見いだせます

Of course there is destiny.
Everyone has the destiny.
The question is do you find the destiny.
The question is whether you own your destiny.
When the meaningful thing in your life happens
Falling in love is the obvious one
But not that deeply meaningful thing in your life
There is deeper meaning what's going on
then you are coming close to yourself.
Destiny doesn't mean necessity.
Destiny is freedom.
You only see your destiny when you are free.

2020年2月13日木曜日

暮らし方

フキノトウの芽

肩肘張らない日々の積み重ねが
これまでとは違う自分に
繋がっていくような暮らし

難儀している身近な人に
さりげなく手を差し伸べられるような
心に余裕を持った暮らし

物や自然を大切にして
争いのない穏やかな日々を
いつまでも慈しむ暮らし


2020年1月2日木曜日

『読書からはじまる』 長田弘


この本で長田さんが書いたこと
読書という「育てる」文化がいまの情報の時代には軽んじられています
世の中には情報の「分ける」文化と読書の「育てる」文化を繋ぐちからがいります
繋ぐちからは「育てる」文化にも「分ける」文化にも必要な「蓄える」文化です
「蓄える」文化がゆたかな社会は底力がつよい
「蓄える」文化を失わせるものは「消費する」だけの文化です
社会を深いところで変えるのは人びとの文化に対する考え方です

あるブログを立ち上げたわけ
わたしはこの一入亭日乗のほかに藁竹茅というブログもやっています
そのブログの目的は藁細工、竹細工、茅葺きの制作工程を記録しておくことです
何かりっぱに聞こえますが、まず忘れっぽい自分自身のためでした

藁細工でもなんでも、わたしは一度つくっただけではつくり方を覚えることができません
それでは作品をもう一度つくることも、人につくり方を教えることもできないのです
ひとつの作品をつくったという経験は、ほっておくとどこかへすぐ消えていってしまいます

世の中には手仕事についての本や資料がたくさんあります
そういうものを参考にして作品をつくることができないわけではありません
げんにそのようにして作品をつくっている人もいるでしょう
わたしから見ればたいへんに根気があり、理解と愛着があり、能力と機会にめぐまれた人です

そのような人はどこにでもいるわけではありませんし、わたしもそのような人ではありません
なので手仕事の手順を写真や動画を入れたブログで遺しておこうと考えました
そのブログによってまず自分が作品を再びつくれ、作品が人の目にふれるようになればいいなと

繋ぐちからとしてのブログ
わたしが藁細工、竹細工、茅葺きをやっている理由はいくつかあります
何かをつくるのが好き、金をかけずに楽しめる、日本の手わざを遺したい、などです

このなかで最後の「日本の手わざを遺したい」というのは中途半端ではできません
好きで楽しむのは自分のことですから問題ありません
ところが「遺す」というのは誰かのためにすることですから自己満足だけではすみません

作品をただ部屋のすみにおいておくだけでは遺したことになりません
作品のうつしさや、手仕事のおもしろさなどは部屋にとどまったままだからです
その作品を日本の手仕事として遺すにはなにか「しかけ」がいります
その「しかけ」としてブログをつかってみました

たとえヘボな作品しかつくれなくてもつくり方の手順はブログに記録できます
そのブログを誰かが見て同じ作品をもっと上手につくってくれるかもしれない
上手にはできなかったとしてもつくる楽しさを感じてくれるかもしれない
あるいはつくったものをじっさいに自分で使ってくれるかもしれない

そのようにして手仕事という文化を繋いでいく力がブログにはあるかもしれない
この本を読んでわたしはそんなことを考えました

2019年12月11日水曜日

スズメバチの巣

 シート掛けが終わりました
今年のシート掛けがこんなに遅くなってしまったのはこのスズメバチのせいです
この時期になると毒はなくなると言われてはいます
それでも大きなハチが飛んでいるそばで作業はできません
ハチの姿が消えたのは今冬二度目の雪が降ったあとでした

作業の手際は良くなり時間もかからなくなりました

2019年12月10日火曜日

シート掛け

シート掛けができました
シート掛けとは?
冬季の多量の降雪の重さで屋根の下地が壊れたり茅葺き屋根の軒先が折れてしまいます
なので一入亭の茅葺き屋根には毎年晩秋にシートを掛けて茅葺き屋根が痛むのを防ぎます

要領
<手間> 一人一日6時間の作業で3日かかります
<材料> UVシート 13枚
     PP紐 太さ6㎜ 200m
     傘釘 150本
<道具> 梯子(大・中・小) 各1台
     ヘルメット 1個
     安全ベルト 1本
     安全確保用ロープ(両端にカラビナ付き) 2本
     手袋 1双
     カラビナ 20個
     ハサミ 1個
     カナヅチ 1本
     バール(小)1本
     道具袋 2個

シートを掛ける前の茅葺き屋根
準備
①道具(梯子を除く!)を身につけます
②PP紐を150㎝の長さに100本切ります
③シートを掛ける順に揃えて梯子の下におきます

梯子(はしご)掛け
①梯子を後中門に運びます
 中門は主屋よりも棟の位置が低いので上まで梯子を掛けやすいのです
②大きな梯子を屋根の傾斜(45度)に合わせて掛けます
③梯子の接地部分の地面をスコップで20㎝掘って梯子が滑らないようにします
④大きな梯子の上端に小さな梯子を結びつけます
⑤さらに小さな梯子の上端をグシ(棟の部分)に結びつけます
 
後ろ半分のシートを掛け終わったら前中門に梯子を掛け替えます
前中門に掛けた梯子
カラビナ掛け
グシの両斜面にアングル材が足場と支点兼用として取り付けられています
このアングルはグシの頂部をまたぐように番線で結ばれています
シートを運ぶ際にその番線に安全確保用のカラビナをかけておきます
グシの上を移動する際には安全確保用ロープをそのカラビナに掛けて転落を防止します
グシの番線にカラビナをかけ終わりました
シートの結びつけ
①梯子に一番近いところのシートを棟に持ち上げます
②シートを広げる際に上下左右の位置関係を確かめます
 特に「谷」のシートはかたちが複雑なので間違えないように注意します
③上端をPP紐でアングルに90㎝間隔で結びつけます
④どうしても紐で結べないところは傘釘を打って止めます
アングルに結びつけられたシート
このままだとグシ(棟の部分)に積もった雪でシートが破れてしまいます
なのでこの部分を細長いシートで覆い傘釘でグシに打ち付けて止めます
シートの下端はPP紐で止めます
落ちてきた雨水がたまらないようにシートのすそはたくし上げて紐で結びます

シート掛け完了です!
3日間の作業が終わりました
ぐるりと反時計回りに見てみましょう
シートの名前つきです
前左、前右
前右、あいだに半間幅のシートを足しました、前谷、前平
前谷、前平、前山
前山、後中、後左、後右
後中、後左、後右
後右、後谷
後谷、後平
後平、後山
後山、左中
前中、前左
一入亭にどれくらいの雪が降るか?
一入亭のある新潟県北魚沼地方は毎冬大雪が降ります
そこは日本の豪雪地帯のなかでも特に積雪の多い特別豪雪地帯なのです
降る雪の量はひと冬で累積10mを超します!
最も深雪になる2月にはずっしりと重い湿雪が3m以上に積もります
一入亭から最も近い気象観測地点(新潟県小出)の年ごとの最深積雪(㎝)は次のとおりです
一入亭は山の中にあるので積雪は小出よりさらに一割以上多くなります

茅葺き屋根の軒先は地面から3m以上の高さがあります
それでも屋根から落ちてきた雪や風下に吹き溜まった雪が屋根にまで達します
ある冬の一入亭
屋根にかけたシートが少し見えます
なぜシート掛が必要なのか?
どっさりと積もった雪はたいへんな重さがあります
日本気象協会によると締まった雪の重さは1立方メートルあたり500㎏です
大きめの普通自動車の重さは1,500㎏ぐらいです
屋根の上に積もった雪は自動車が何台も乗っているような重量になるのです!

茅葺き屋根は雪の重さだけでなく他の原因でも傷みます
・屋根の表面の茅に凍りついた雪が、落下とともに茅を引き抜いてしまう
・屋根の雪掘りをする際にスノーダンプやスコップで茅葺を傷つけてしまう

こうしたことを防ぐために冬季は一入亭の茅葺き屋根にすっぽりとシートを掛けるのです

シートの形
一入亭の屋根には喜多村暁さん(故人)という屋根職人にシートを掛けてもらっていました
喜多村さんのシート掛けはシートを屋根の形に合わせて縫製する点がユニークでした
一入亭は家の前後に曲り家の出た中門造りという独特の形をしています

屋根図(屋根を上からみたところ)
これを四角形のシートで覆うだけでは作業に手間がかかりシートもたくさん必要です
そこで喜多村さんは屋根の形状に合わせてシートを縫製することを考えました

具体的には下のように分割して屋根をシートで覆います
屋根シート図
赤字がそれぞれシートの名前で全部で12枚あります
このうち前左、前右、前谷、前山、後山、後谷、後右、後左の8枚が縫製したシートです
あとの前中、前平、後平、後中の4枚は四角いシートをそのまま使います
それぞれのシートは広げると次のような形をしています
屋根シート展開図
シートの縫製
シートは喜多村さんはブルーシートを使っていました
ブルーシートは安価ですが色合いがいまひとつなのとせいぜい三冬しか持ちません
今は色がシルバーで軽く耐久性の劣らないUVシートが出回っています
シート掛けを自分でやるのを機会にUVシートに徐々に更新していくことにしました

更新するには当然ながら8枚のシートを縫製しなければなりません
そこで生まれてはじめてミシン縫いをすることになりました

ジャノメ トピアエース802 1973年製
川越の家にあった古いミシンでやってみることにしました
ミシンを取り出してみるとページがバラバラになった取扱説明書が入ってました
表紙にはサイケなパンタロン(て、わかりますか?)をはいた娘がポーズしてます
うーん、やればできるかな?
試し縫いしたところなんとか出来そうなのでこれを一入亭に持っていきました

一入亭のチャノマ(17.5畳)にシートをいっぱいに広げてまず裁断します
縫う部分を洗濯ばさみで仮止めします
針は14番、糸は30番のスパンミシン糸ジーンズ厚地用を使います
上糸と下糸の調子を調整すると結構快適に縫えるようになりました
直線縫いで二重に縫います

ザクザク縫うのは思いのほか気持ちいいです
慣れてくると一つのシートを2時間ほどで裁断から縫製までできるようになりました
それにしても45年前のミシンがいぜん快調なのには驚きました

茅屋根がすっぽりとシートで覆われ冬を迎える準備が整いました

2019年11月11日月曜日

『世界はうつくしいと』 長田弘


ことばが信じられない日は、
窓を開ける。それから、
外にむかって、静かに息をととのえ、
齢の数だけ、深呼吸をする。
ゆっくり、まじないをかけるように。
そうして、目を閉じる。
十二数えて、目を開ける。すると、
・・・

人は、誰も生きない、
このように生きたかったというふうには。
どう生きようと、このように生きた。
誰だろうと、そうとしか言えないのだ。
・・・

日々の悦びをつくるのは、所有ではない。
草。水。土。雨。日の光。猫。
石。蛙。ユリ。空の青さ。道の遠く。
何一つ、わたしのものはない。
・・・
素晴らしいものは、誰のものでもないものだ。
・・・
平和とは(平凡きわまりない)一日のことだ。

いつからだろう。ふと気がつくと、
うつくしいということばを、ためらわず
口にすることを、誰もしなくなった。
そうしてわたしたちの会話は貧しくなった。
うつくしいものをうつくしいと言おう。
・・・
一体、ニュースとよばれる日々の破片が、
わたしたちの歴史というようなものだろうか。
あざやかな毎日こそ、わたしたちの価値だ。
うつくしいものをうつくしいと言おう。
・・・
何一つ永遠なんてなく、いつか
すべて塵にかえるのだから、世界はうつくしいと。

世界はわたしたちのものではない。
あなたのものでもなければ、他の
誰かのものでもない。バッハのねがった
よい一日以上のものを、わたしはのぞまない。

替えがたいものは、幸福のようなものだ。
世界はいつも、どこかで、
途方もない戦争をしている。
幸福は、途方もないものではない。
どれほど不完全なものにすぎなくとも、
人の感受性にとっての、大いなるものは、
すぐ目の前にある小さなもの、小さな存在だと思う。
・・・