2020年7月14日火曜日

『超高齢社会のリアル』 鈴木隆雄

<老いと障害の発生>
移動能力あるいは歩行能力の障害⇒排泄障害⇒摂食障害

<歩行速度と寿命の関係>
歩くことは人の健康を維持するために重要な能力なのです
早く歩ける人は統計的に見て健康寿命が長いのです
ゆっくりしか歩けなくなると人はどんどん衰えていくのです

例えば、65歳で歩行速度が遅い(<0.4m/s)場合の10年間の生存年数は男性約10年女性約15年です
最も歩行速度が速い場合(≧1.4m/s)にはほど30年、40年です
その差は一目瞭然で、歩行速度が遅いほうが、優位に生存年数が低いことが示されています

<知能の発達と老化>
知能は結晶性知能と流動性知能から成り立っていると考えられています
結晶性知能は、過去に習得した知識や経験をもとに日常生活の状況に対処する能力を支えます
流動性知能は、新しいものを学習したり覚えたりするような能力で、加齢の影響を受けやすい
豊かな知識力の反映とも言える「語彙」の能力は、学校教育後の20歳頃から一貫して向上します
そしてその能力は、結晶性知能として高齢期になっても高く維持することが可能です

<不健康寿命を延ばしてどうするの?>
いま世の中では健康寿命を延ばそうという大合唱が起きています
しかし、健康寿命はすでにかなり延びていて平均寿命に近づいてきています

    健康寿命 平均寿命  不健康期間
 男性  73歳   82歳    9年間
 女性  76歳   88歳    12年間

平均寿命をこれ以上延ばすとただ不健康な期間が伸びていくことになります
それでいいのでしょうか
よく生きよく死ぬことが大事です

<不健康寿命は短縮した方がいい>
ヒトに生命維持の障害が生じた場合、「人間」として他者を助ける美徳を持っています
こうした美徳が思いもよらぬ悲劇をもたらすこともある
ヒトは本来加齢に伴いゆっくりとした機能障害によって寿命を全うし、命を閉じるのが「掟」です
それが、本人の思いとかけ離れた他者の意思と、発達した医療技術によって「死」が延伸されてます
これは悲劇以外の何者でもありません
個人の尊厳を損なうだけでなく、費用対効果から見ても無益です
いつかは終えていく限りある命を見切る覚悟も必要です

<人の活動能力の諸段階>

 単純←――――――――――――――――――――――――――――――――→複雑
  生命維持 呼吸 不快刺激回避 疾病予防行動
  機能的  移動不能 入院 外出不能 外来通院 不自由ない 体育的能力
  健康度                    身体的行動
  知覚―  ”感覚” 知覚 知覚の 見当識 短期 蓄積 古典的  道具的  ‥
  周知          恒常性     記憶 記憶 条件付け 条件付け
  身体的  移動 食事 身づくろい
  自立
  手段的  家政 料理 家計管理 雇用
  自立
  状況   感覚器  好奇心 余暇活動 探求 創造的能力
  対応   効果器の
       移動
  社会的  感覚的な 普段の  親密な  養育 利他的 親として 創造的リーダー
  役割   個人的  つき合い つき合い    行動  の行動  シップ・愛 
       つき合い                      
 
<新活動能力指標(JST版)>
 
因子名            項目
 社  1 町内会・自治会で活動していますか
 会  2 地域のお祭りや行事などに参加していますか
 参  3 奉仕活動やボランティア活動をしていますか
 加  4 自治会やグループ活動の世話役や役職を引き受けることができますか

 新  5 携帯電話やパソコンのメールができますか
 機  6 携帯電話を使うことができますか
 器  7 ATMを使うことができますか
 利  8 ビデオやDVDプレーヤーの操作ができますか
 用

 情  9 教育・教養番組を視聴していますか
 報  10 外国のニュースや出来事に関心がありますか
 収  11 美術品・映画・音楽を鑑賞することがありますか
 集  12 健康に関する情報の信ぴょう性について判断できますか

 生  13 病人の看病ができますか
 活  14 孫や家族、知人の世話をしていますか
 経  15 生活の中でちょっとした工夫をすることがありますか
 営  16 詐欺、ひったくり、空き巣等の被害にあわないように対策をしていますか

<孤独死のリスク>
一般に「孤独死」と聞くと「可哀想」「無念」「薄情」「悲惨」といったイメージを抱きがちです
実は孤独死そのものよりも孤独死に付随する二次的な修飾要因※が問題であることが少なくありません
※孤独死に付随する二次的な修飾要因=経済問題や家族問題、そして死体変化

<認知症の早期発見と先送り>
教育期間(高等教育)、生活習慣病の管理、食事や運動、活動的なライフスタイルの確立

<運動が認知機能に対して有効性を持つ潜在的なメカニズム>
 運動器系の要因    神経系の要因     循環器系の要因
 有酸素能力の向上   神経栄養因子の増加  身体組成の適正化
 筋量・筋力の向上   神経新生       高血圧の予防と制御
 骨密度の向上     シナプス新生     脂質代謝の適正化
 体脂肪の減少     脳容量の増加     インスリン抵抗性の改善
 運動機能の向上    神経細胞死の減少   炎症マーカーのレベル低下
 転倒の減少      βアミロイドの分解   抗酸化作用
 (頭部外傷の減少)  ノルアドレナリン   毛細血管の増加
            システムの賦活    脳血流低下の減少
                       脳の酸化ヘモグロビンレベルの向上
                       脳の虚血耐性の上昇

<栄養学的視点からの予防>
いろんな食品をバランスよく食べる人ほど、認知機能の低下するリスクが低い
バランスよくいろいろな食品を食べる食習慣が脳の機能維持し、認知症を予防する可能性がある

<人生の目的を強く持つ>
人生の目的を強く持った高齢者はアルツハイマー型認知症や軽度認知障害となるリスクが低いことが報告されている
規則正しい日常生活、学習と生涯教育などの健康行動が脳の予備力を高め、認知症予防につながる可能性がある

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