2024年9月12日木曜日

『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』森 博嗣


森さんはあとがきで「人の意見を聞くときや、人が書いた本を読むときには、それで自分が影響を受けようという気持ちでいる」と書いています
わたしが本を読もうとするときもまったく同じ気持ちで読みます

この重たいテーマの本では抽象的思考の大切さが説かれています
それは抽象的思考によっていろいろな問題を考えることが有効だからです

「抽象的思考をする人は、どんな人間からでも、自分の利益になる発想を拾えることを経験的に知っている。それだからこそ、自然に人の話に耳を傾けるようになる」

自分には物事を抽象的に考える傾向があると気づいたことがありました
それはアメリカの大学院で「成人の発達」という講義を受けたときです
成人にはつぎの4つの顕著な学習スタイルがあるとのことでした

具体的経験型(Concrete Experience)
ことにこだわった考えを持たず、起こっている事象の中に飛び込んで、自ら体験することを好む。
熟考的観察型(Reflective Observation)
事象のあらゆる細部について様々な角度から考察し、起こったことの密接な関係全てを検証することを好む。
抽象概念化型(Abstract Conceptualization)
ある事象について、関係する重要な要因を見きわめ、理論や仮説を導き出すためにそれらの要因を関係づけることを好む。
活動的実験型(Active Experimentation)
目的を持ち、計画を立てて、物事をより良くより簡単に、また実験が必要なことを行うのを好む。

このことを学んだあとわたしは自分自身の傾向を考えてみました
そして自分は抽象的概念型の傾向が強いのではないかと判断しました

森さんは「抽象的思考は論理的思考と具体的行動がセットにならなければ、問題を解決できない」といっています
これもアメリカで学んだことと一致しました
ちょっと長いですがわたしの留学報告書から該当部分を引用します

「(成人の)学習者は自らの具体的経験を整理・考察し、問題意識を明らかにします。そのうえで指導者は、この問題の解決への手助けになる研究の枠組みを示唆し、問題とする分野の研究に役立つ図書を大量に指示します。学習者はこれらを読み進めると同時に、指導者が決めた時期に、個々の読書について自分の問題意識に照らし合わせて、何を感じそして学んだかを小論文としてまとめ、指導者に提出します。この作業の後、自分と同じ問題意識を持つ人々と、自分の信じるところ、疑問とするところについて徹底的に議論します。

これらの作業をしていくうちに、学習者の脳裏に、自分の抱えている問題が何を原因として生じているか、という因果関係が次第に明らかになり、概念の抽象化ができていきます。

そして、最後にはこのような問題を解決するためには実際にどのような方法をとったらよいかの計画に移り、その計画を実行してみて自らの仮説の正当性を立証する、具体的実験を行うことになります。」(Adult Study Abroad ‐早大職員の大学院留学レポート‐)

森さんは国立大学の教官として忙しい生活をしていました
もっと自由に生活できるよう収入を得たいといくつも小説を書き始めました
それが思いのほか売れて生涯働かなくてもいいだけのお金を稼ぐことができました
それで森さんは大学教員も小説家もやめて自分のしたい生活をすることにしました
そして今はその生活を楽しんでいます

わたしは私立大学の職員として40年間にわたり事務の仕事をしました
妻の死をきっかけにその仕事を辞めて自分のしたい暮らしをすることにしました
そして今はその生活を楽しんでいます

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