2022年8月2日火曜日

『70歳が老化の分かれ道』 和田秀樹

この人が書いた『六十代七十代 心と体の整え方』という本を半年ほど前に読みました
その時たいそう驚いたことがありました
本のはじめからおわりまで接続詞が頻出するのです

「ところで」「ただ」「ともあれ」「いずれにせよ」といった紋切り型の接続詞です
これらが雨あられと文章(段落)の始めに出てくるのでとても気になりました
本の内容よりも出てくる接続詞の使われ方にすっかり注意が奪われてしまいました

そしてとうとうこの本にどんな接続詞が何回使われているか調べてみることにしたのです
10色の細いポストイットを用意しました
それを出てきたすべての接続詞の隣に貼り付けました

「ところで」は赤、「ただ」は黄、「ともあれ」は緑、といった具合に色別にしてです
全部貼り終えてそのきれいだったこと
そして200ページほどの本の文頭に接続詞が228個使われていることが分かったのです!
この調査の結果この人は接続詞を頻用する人だということが鮮明に記憶されました
(肝心かなめの本の内容はちょっとよく覚えていません)
なのでこの人の次回の本にはいくつの接続詞が登場するのか楽しみにしていました

そしてこの本が刊行されたのでさっそく川越市立図書館で借りて読もうと予約を入れました
ところがなかなか順番が回って来ません
これはきっとみんな接続詞を数えるのに時間がかかっているのだと思い楽しみに待ちました

予約してから数か月たちようやく本を借りることができました
それがです
読んでみたところ接続詞がちらりほらりとしか出てきません
というか前の本に比べるとほとんど出てこないといってもいいでしょう

おかげで文がとても読みやすく内容が頭にすっと入って来ました
それにしても紋切り型の接続詞が頻出した前著と比べてこれはいったいどうしたことか?
その理由を考えてみました

今回の本は前の本とは別の出版社から刊行されています
なので本の編集を担当する人が変わったのはたしかです
すると編集担当者の接続詞に対する考え方の違いによってこうなったのかなと想像できます

前の本の編集担当者は接続詞を多用した方が論旨が明確になると考える人だった
それで「先生、接続詞をたくさん使った方が普通の人には分かりやすいですよ」と言った

今回の本の編集担当者は文意を明確にすれば論旨は自ずと明らかになると考える人だった
そして「先生、やたらと接続詞を使うのはうざいですよ」なんて言った

奇しくも接続詞について対照的な考えを持つ編集担当者二名によりこれらの本は生み出された
このように思量できます

他方この著者が接続詞の使い方を意図的かつ劇的に変えたという可能性も否定できません
そうも考えられるのですがこの2冊だけの比較では断定できません
この点は今後の課題とさせていただきます

前置きが長くなりました
この本についてです

人生の「最後の活動期」である70代の過ごし方がその後の分かれ道です
80代90代はもはや活動期ではなく完全な「老い」の期間なのです
この「老い」の期間のあり方を左右するのが70代の過ごし方です
70代以前に始めた習慣は80代以降も生涯にわたって続きます

「老い」の期間を健やかに過ごすためには二つのことが重要です

ひとつは脳の機能の老化を食い止めていかにして若さを保つかということです
体の中で脳だけは原則的に新しい細胞をつくらない臓器です
脳の神経細胞は細胞分裂をしないので同じ細胞がずっと使われます
脳の神経細胞の老化によってアルツハイマー病などを発症します

もう一つは70代までに持っていた運動機能をいかに長持ちさせるかということです
70代が来る「老い」に備えることができる最後のチャンスなのです
70代で運動機能の維持のために努力したかどうかが80代以降大きな差になって現れます

身体の健康はある程度保てても脳の健康はそのようには保てません
脳機能の老化はすでに70代になる前から進行しています
70代になると「意欲の低下」が進み活動レベルが低下してきます
「意欲の低下」は前頭葉の老化と男性ホルモンの減少が主な原因です

前頭葉とは大脳の前方部分で意欲、思考、創造などに関わっている部分です
男性ホルモンは性機能だけでなく他者への関心や意欲にも関わっています
これらを若い時のように維持すれば日常の活動レベルを保ち老化を遅らせることができます

老化を進めないためにできること
・一生続けられるような仕事を持つ
 ⇒農業、漁業、職人など
  ただしお金や効率だけを求めない
  自分の知識や経験を生かし誰かを助け社会の役に立つ
・仕事以外の社会参加の機会を持つ
 ⇒町内会の役員、マンションの管理組合の役員、趣味の集まりの役職、ヴォランティア
・運転免許証を返納しない
 ⇒生活環境の大きな変化が運動機能や脳の働きを廃れさせる
・肉を食べる
 ⇒肉にはセロトニン(別名「幸せ物質」、意欲低下の抑止に働く)の材料となるトリプト
  ファンが多く含まれる
  肉には男性ホルモン(特にテストステロン)の原料になるコレステロールがたくさん含
  まれている
  男性ホルモンが減少すると性機能だけでなく活動意欲が低下し元気のない「しょぼくれ
  た老人」になる
  コレステロールは動脈硬化を促進し心筋梗塞のリスクになる
  世界全体で見ると心疾患が死因のトップなのでコレステロールは悪者である
  日本の疾病構造は心筋梗塞の10倍の人ががんで亡くなるという特異なものである
  むしろコレステロールを摂らないことによる男性ホルモンの減少を恐れるべき
・陽の光を浴びる
 ⇒セロトニンは光を浴びるとたくさんつくられる
  うつ病の人にはセロトニンが不足している
  セロトニンによって脳内にメラトニン(別名「睡眠ホルモン」)がつくられる
  メラトニンが増えると快眠でき不安感が取れてうつ病の予防になる
・変化のある生活をする
 ⇒外に出かける用事を生活の中に組み込む
  散歩のコースを週に一度は変える
  新しい店に行ってみる
  いつもとちがう作家や別のジャンルの本を読む
  週に一度はつくったことのない料理をつくる
・アウトプット型の学習スタイル
 ⇒本を読んでインプットするより会話などのアウトプットの方が前頭葉は活性化される
  独学はせずスクールやサークルに入って学ぶ
  得た知識をこれまでの経験や他の知識を使って加工し「自分の考え」として述べるとき
  に前頭葉は活性化される
・あまり激しくない運動
 ⇒散歩、太極拳など
  エレベーター、エスカレーターを使わない
  若いときから続けているスポーツをできる限り続ける
・転倒リスクを減らす
 ⇒元気なうちから自宅室内の動線に合わせて手すりなどを設置しておく
  服用している薬を見直し薬の副作用によるふらつきをなくす
・ダイエットしない
 ⇒メタボ対策は虚血性心疾患が死因のトップであるアメリカでは有効
  日本の死因で多いのはがん
・おいしいものを食べて免疫力をアップさせる
 ⇒食べたいものを食べておいしいと感じることが免疫機能を高めてがん予防になる
・お酒に注意
 ⇒特に一人酒は酒量が増えやすくアルコール依存症になるリスクが高い
・好きな相手、楽しい仲間、若い人とつき合う
 ⇒人づき合いをしていると男性ホルモンが少しずつ増えてくる
  言いたいことが言い合える相手との交流は前頭葉の活性化に最適である
  人づき合いが嫌であればSNSなどで他者と関わる
・苦しければ苦しいほど大きな成果が待っているという考え方から解放される
・いま飲んでいる薬を見直す
 ⇒薬でいわゆる「正常値」まで血圧や血糖値を下げてしまうと身体もだるくなり頭がボー  
  っとした状態になってしまう
・健診より脳ドック、心臓ドックがおススメ
 ⇒心筋梗塞や脳梗塞をほんとうに予防したいのなら
・不眠、不安、食欲不振、意欲低下など心の不調はうつのサイン、精神科・心療内科へ

「70代の危機」=退職、介護、死別、うつを乗り越える
・定年後の喪失感の克服
・趣味は働いているうちにつくる
・介護を生きがいにしない
 介護は恰好の時間つぶしになる
・在宅介護より在宅看取りという選択
 最後ぐらいは病人の好きにさせる
・配偶者や親との死別を乗り越えて生きる
・うつのサインを見逃さない

本書のしめくくりのことばです
豊かな人間関係こそが晩年を幸せなものにする
歳をとってやさしくなることが幸せへの近道

読後感
その一
わたしたちは
多少のリスクは承知のうえで毎日をどれだけ生き生きと生きるか
それとも
長生きできるかもしれないと思いながらしょんぼり生きるか
どちらかを選ぶことができます
わたしは迷いなく前者を選びます

その二
わたしはもっと若い人たちとつながりを持ち
彼らが考えやろうとしていることを理解しようと努め
自分の経験や知識が役に立つなら彼らに惜しみなく
それを差し出したい

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