2018年7月10日火曜日

『穏やかな死に医療はいらない』 萬田緑平


もし医師からがんを宣告されたらこう願うでしょう

なんとかがんを治して身体から消してもらいたい
それが無理であれば一日でも長生きできるようにしてもらいたい

いまどきの人として当然の願いかなと想像します
がんになるともう普通の生活を送ることが難しくなると思うからです
がんになればもう長く生きることはできないだろうからです
直観的にそうに思うのではないでしょうか
これと呼応するような医師の職業観が紹介されます

「病院の医師にとって治療の目標は患者さんにとっていい人生を送ってもらうことではなく、少しでも長生きさせることです。「医師の仕事は治してあげること」という思考が染みついていて、これを生きがいとして仕事をしています」

これは「がんですよ」と言われた人の願いと矛盾しませんから問題ないように見えます
がんを治して消してくれて長生きができるのであればそれに越したことはありません
このような前提でがん検診やがん治療が行われています
その有効性はどのようでしょうか

効果のないがん治療のために多くの人が精神的、身体的、経済的に苦しめられています
その典型が抗がん剤治療です

「がんを退治してくれる可能性もある反面、劇薬でもあります。もし健康体の人ががん患者さんと同じ抗がん剤治療を受け続けた場合、おそらく数年以内、抗がん剤やその人の体質によっては、数週間で亡くなってしまうことでしょう。抗がん剤治療とは、体中に毒ガスを撒くようなものです」

抗がん剤治療とはがんとがんを宿す身体を共に痛めつけ命を縮めてしまうものなのです

「この治すことの真逆にあるのが緩和ケアです。さらに言えば、在宅緩和ケアは医療設備ゼロの自宅でこの真逆のことをやるのです。先端医療を実践している病院医師の感覚と僕たちがしている医療は、なかなかなじまないかもしれません」

緩和ケアとは残された人生を自分らしく生きる支援コースのことをいいます
死に直面した患者さんやそのご家族の心身の痛みを予防したり和らげたりすることです
病院医師から在宅緩和ケア医への橋渡しをうまくやることがたいせつです

「今あるエネルギーを一番効率よく使うのであれば、身体の訴えを信じ、枯れるようにやせていくのが一番です。もちろん、その先には必ず死があります。けれどもその自然の流れに乗れば実はもっと長生きができるし、苦しくもありません」

このことをどのくらいの病院医師が認識しているのでしょうか

「死を認めれば、死は苦しくなく、むしろ少し長く生きられる。死を認めなければ、死は苦しく、命は短くなる」

緩和ケアの情報はつぎのところで得られます
・各都道府県の在宅緩和ケア支援センター
・公的機関
・NPO団体

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