2018年5月26日土曜日
2018年5月25日金曜日
『騎士団長殺し』 村上春樹
『人間界は時間と空間と蓋然性という三つの要素で規定されておる』と騎士団長は言いました
人間は自由であればどのようにも生きられると考えたい
ところが全ての人間の人生は特定の時間と空間と蓋然性のもとで展開します
人はその中でほんのわずかのことを自らの意思として選択できるに過ぎません
そう思うと何かとても虚しい感じがしますがこれが現実でしょう
少し前に読んだロング・グッドバイ(レイモン・ドチャンドラー著、村上春樹訳)の訳者あとがきの一節を思い出します
「戦わない。
それは目に見えないし、立てる音も聞こえない相手だか
これはチャンドラーの小説に登場する人物についての村上春樹さんの解釈です
「騎士団長殺し」の主人公(最後まで名前が出てきません)もこのような人だと思いました
2018年5月20日日曜日
一般道を走る
一般道(上武道路)を走る |
川越の自宅から一入亭の行き来にはいつも一般道を使います
道を上越国境へ向かって行くと澄んだ青空に雲が流れていました
何かの作品にしたいようなさわやかな景色でした
エッセイを書いたりスケッチを描くのが得意だったらこれを作品にできるでしょう
得意な表現の手立てを持っていないと感動をリアルに表すことができず残念です
せめてこうしてブログに織り込んでおくことにします
高速道は普段からほとんど使いません
料金が高いからです
一般道は以前より整備が進んで昔の有料道路のようです
路面はスムーズで速度もそれなりに出せます
高速道ほどでは無いにしろ時間もかかりません
信号は少なく、急カーブやアップダウンに煩わされることもありません
いずれも1970年代頃に比べればということですが・・・
一般道を使った往復400キロ以上の走行に慣れると高速道を走るのがしんどくなりました
料金が高いのは勿論ですがそのほかにも頭痛のたねがいくつもあります
・燃費が悪くなること 27㎞/Ⅼ ⇒ 23㎞/Ⅼ
・スピード狂や大型車などの傍若無人走行の危険にさらされること
・思ったところで食事、トイレ、買い物などの用事を足せないこと
なるべく高速道を使わず一般道を走るようにしてからすでに2年ほど経ちました
今では好んで一般道を走っています
一般道の近くにある美味しくて安い食事処やケーキ屋を見つけるのが楽しみです
一般道を走る習慣はもう一つ新しい楽しみをもたらしてくれました
年の暮れにこの一年で一般道を走って高速代がどれくらい浮いたか計算するのです
一入亭への往復だけでなく法事や旅行などで高速道を使わなかった分も含めます
すると10万円をはるかに超えるお金を一年で節約できたことが分かります
とてもいい気分です
2018年5月17日木曜日
『不死身の特攻兵』 鴻上尚史
昨秋の黒旅(6)で鹿児島の知覧にある特攻会館へ行きました
その展示を見終わってブログにつぎのような感想を記しました
「ここには特攻隊員となった若者たちの悲壮な気持ちがあります
隊員の親御さんたちが隊員の死を悼む気持ちがあります
そして出撃地となった知覧の人たちの無念の思いがあります
ここにないのは誰がどのようにして特攻を発案し
それが日本軍の作戦として採用され実行されていったのか
という説明です」
特攻を命令した側についてもっと知る必要があると思ったのです
今回『不死身の特攻兵』を読んで特攻会館で抱いたにがい思いへのこたえを見つけました
特攻作戦がなぜ考案され、どのように出撃が命令されたかが書いてあったからです
その内容は高木俊朗さんの『陸軍特別攻撃隊』に準拠したものです
それでも胸のつかえが降りるような気がしました
佐々木友次さんという下士官(伍長)が1944年に9回の特攻出撃を命ぜられたのです
その概要は以下の通りです
ーー
月日 集合時刻 出撃機数 有掩機数 内容(戦果は軍発表) 上聞/葬式
11月12日 午前3時 4機 20機 佐々木戦艦一隻撃沈のち戦死 有
11月15日 午前4時 4機 8機 僚機に合流できず帰還
11月24日 正午近く 2機 機数不明 壮行式最中に爆撃にあい出撃中止
11月28日 午前10時 1機 6機 敵艦を発見できず帰還
12月4日 午後3時 1機 2機 敵戦闘機編隊に遭遇したため帰還
12月5日 午後3時 4機 9機 佐々木他戦艦一隻大破炎上のち戦死 有
12月7日 午前7時 10機 3機 整備不良で離陸できず
12月16日 早朝 1機 無 敵船団約200隻に遭遇し帰還
12月18日 不明 不明 有無不明 離陸後エンジン不調のため帰還
ご覧のとおりひと月余りの間に佐々木さんは9回もの出撃を命令されました
出撃のための集合時刻が始めは未明だったのが回を追うごとに遅くなりました
遅く出撃するとアメリカ軍の戦闘機と遭遇する確率が高まります
しかも最後のほうは一人で直掩機無しで出撃させられました
壮行式では知り合いがバナナを一房くれただけということもありました
司令官や参謀長からは「死んでこい!」「死んでくるんだ!」と口々に言われました
それほど上官は佐々木さんに死んでもらいたかったのです
華々しい戦果をあげ佐々木さんは戦死しましたと2度も天皇に報告してしまっていたからです
田舎では佐々木さんの葬式を2回出しました
天皇にまで報告し軍神となった佐々木さんを処罰できません
なので処刑飛行として佐々木さんに何度も出撃を強制したのです
9回目に帰還したのちにはもうフィリピンの日本軍は特攻する飛行機を持っていませんでした
そのため司令官や参謀長は佐々木さんに処刑飛行をさせられなくなりました
そこで司令官は参謀長に佐々木さんを密かに殺すよう命じました
参謀長は狙撃隊を作りましたが間もなく日本が降伏したため実行されませんでした
ーー
この後に佐々木さんは生まれ故郷に帰り92歳まで生きて2016年に亡くなりました
亡くなる直前に著者の鴻上さんは佐々木さんに何回かインタビューをしました
そのインタビューの内容と「特攻の実像」という特攻の分析が鴻上さんの業績です
この本のあとの半分はすでに高木さんが公にした『陸軍特別攻撃隊』からひいた内容です
この本にはユニークな部分が半分しかないとしても出版の意義があると思います
それはまず特攻を命令した側の実態を改めて知らしめ
そして佐々木友次さんという反骨の人の存在を伝えていることです
2018年5月14日月曜日
音楽メディアとその価格
ミズーリの空高く |
リラックスしたいときにはいろいろなことをします
本を読んだり、運動をしたり、スポーツ中継を見たり・・・
音楽を聞くのもそのひとつです
なかでもジャズが好きです
数年前に亡くなったベーシストでチャーリー・ヘイデンという方がいました
彼がパット・メセニーと共演した「ミズーリの空高く」というアルバムがあります
その深い音色を聞くたび、とても癒されます
このアルバムを初めて聞いたのは図書館で借りたCDででした
こんなにいい音楽を無料で聞けるなんてありがたいと思いました
ダウンロードさせてもらい外出先でもプレーヤーで聞いています
このアルバム一枚についていろいろなメディアがあります
その価格はメディアにより次のように異なります
新品 LP アマゾン 20,161円(送料350円含む)
CD 定 価 2,621円
アマゾン 1,850円(送料350円含む)
MP3ダウンロード 1,200円
中古 CD アマゾン 850円(送料350円含む)
アマゾンプライム 0円(年会費3,900円)
図書館のCD貸し出し 0円
メディアによるこのような価格差はこのアルバムに限ったことではありませんね
購入する人の考え方と懐具合によって選ばれるメディアは異なります
一入亭におきましては聞きたいアルバムが図書館にあればそれを借りて聞きます
図書館に無ければ中古CDで音質に問題のないものがアマゾンに出ていればそれを買います
アマゾンプライムというのは特定のアルバムをストリーミングで聞けるサービスです
アマゾンの無料宅配などと抱き合わせになっていて便利なので会員になっています
MP3ダウンロードはモノが手に入らないのであまり買う気になれません
これしかメディアの選択肢なかったり中古CDより低価格であれば買うでしょう
新品はLPはもちろんCDも割高感が強いのでMP3ダウンロード以上に手が出ません
というわけで図書館で借りるかアマゾンプライムで聞くか中古CDを買うというスタイルです
2018年5月13日日曜日
2018年5月10日木曜日
『ロング・グッドバイ』 チャンドラー 村上春樹訳
フィリップ・マーロウはタフな私立探偵です
権力、金、暴力に屈することなく最後の最後まで犯人を追い求めていきます
その過程で彼は命の危険にさらされ、何度も手ひどい目に遭います
その代価として法外な金を求めることもなく侘しく一人で暮らしています
たとえ大金持ちの美人に言い寄られても結婚しません
とうてい考えられないほどのタフネスさです
このタフネスさと同じくらいあるいはそれ以上に目を見張るところが彼にはあります
犯人を捜しに難行苦行を強いられながらも自らについて語らないことです
彼は必要なときには雄弁であり、ウィットに富み、ユーモアのセンスもあります
だからといって自分の感情や思いなどをしゃべったりはしません
大変なことをしていれば普通なぜこのように行動するのか言いたくなるじゃないですか
自分はこう思うのだ、こう考えているのだ、だからこのように行動するのだ、と
しかし彼は言いません
現実社会には正義のためだ、世のため人のためだなどと事あるごとに言い募る人々がいます
政治家、官僚、学者、宗教者、教育者によく見られます
ところが往々にして実力と行動が無かったり、もともとその気がないこともよくあります
こちらはフィクションではないので実害があります
この本でとりわけ心地がいいのはあちこちに気の利いたユーモアがちりばめられていることです
絶体絶命の時、嫌な気持ちになった時、ガックリ来た時、すごく痛たい時には、顔が引きつったり、不機嫌になったり、しょんぼりしたり、辛くなります
そのような時こそユーモアの出番です
その場の雰囲気や、人の気持ちを一瞬にして変える魔法です
こういう本を読んでいるとこの物語がいつまでも終わらないで続いて欲しいと思います
実際500ページ以上もあってなかなか読み終わらないのは事実です
でもシーンがきっちり平均10ページに区切られていてとても読みやすい
単調な肉体労働の傍らにこのような本をチビチビ読むと取り合わせがいいような気がします
なにか村上さんの作品を読んでいるような気がしました
2018年5月5日土曜日
いつものメニュー
2018年5月1日火曜日
かたる 英語 電車内勉強
給料生活をしていた頃は通勤電車のなかでラジオ英語講座の勉強をしていました
電車のシートに腰掛けて揺れに耐えながら録音したヴィニエットを聞いて書きとっていました
今は家の掘りごたつ(さすがにもう電気は入れていません)で勉強をつづけています
昨日都心へ出かける用事があり何年ぶりかで電車の中で勉強しました
すると電車の揺れのため書きとる字が乱れに乱れてしかたありませんでした
通勤していた頃はできていたのにどうしたことでしょう
バランス能力が落ちたのでしょうか
それとも以前もまともには書きとれていなかったのでしょうか
たった数年でそれほど身体能力が極端に低下したとは思えません
家でゆったりと書くのに慣れたので突然の汚い字にびっくりしたのかな
それとも電車の揺れが以前よりひどくなったのかしらん
上手く書きとれないことが気になって肝心の内容があまり頭に入りませんでした
これに類することが気がつかないうちに生活の端々で起きているのかもしれません
給料生活をしていた頃はやりたいことを劣悪な条件を耐え忍びながら何とかやっていた
そして今は自分がやりたいことだけを恵まれた条件の中で楽々とやっている
人間は生きていくうえで必要がなくなった能力をさっさと切り捨てるのだそうです
春になったらパラリと冬服を脱ぎ捨てるように
そういうことが知らないうちにからだのあちこちで起きているのかもしれません
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