2025年1月22日水曜日

お金の減らし方 森博嗣

お金の減らし方で今でもときどき思い出す30年以上前のできごとがあります

新潟の山村にある茅葺き古民家が気に入ってそれを買ってもいいか妻に相談しました
その家の値段は当時の私の1年間の所得額を上回っていました
そのうえ借家住まいで子供が一人いるのに高価な買い物をするのはいかがなものだろうか
自分でもそう思ったのですがどうしても欲しかったので妻の意見を聞いてみたのです

「よく考えてそれでも欲しいのなら買えばいい」というのが妻のこたえでした
私は喜んでその家を買いました
ひとりであるいは家族と修理に何度も通い毎年草刈りや雪掘りをしました

古民家はほとんど木と竹と藁と土でできています
なので家を修理しているうちに竹や藁にしぜんに興味を持つようになりました
その家には藁ぞうりや藁を叩く槌など前の住人が使っていたものが残っていました
こういう民具のようなものがつい最近まで使われていたのだと知りました
近隣の町の荒物屋や古道具屋で竹かごや藁細工を売っていました
私はそれらを買い集めまた自分でも作ってみました

私が定年を迎える前に妻は亡くなりました
三人の息子は定年の前後につぎつぎと独立していきました

私は退職したあと藁細工・竹細工と茅葺きをやる生活に改めました
それから5年ほどして手仕事のワークショップを川越で始めることにしました
ワークショップを続けているうちにあちこちから依頼をいただくようになりました
さらに自宅で手仕事のワークショップとあわせて個人レッスンも始めました

新潟の家には息子たちと入れ替わるようにして若い友人たちが来てくれるようになりました
その人たちの力を借りて茅葺きの修理や草刈りと雪掘りができるようになりました

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