2018年4月18日水曜日

『沈黙』 遠藤周作


この本で沈黙とは神の沈黙です
具体的には江戸時代はじめのキリシタン迫害に対し神が何も為さなかったことです
司祭や修道士のみならず信者にも苛烈な拷問が加えられ多くの人が磔で殺されました
このような状況に神は救いの手を差し伸べず沈黙していました

このように沈黙する神を人はなぜ信仰するのでしょうか
この小説はそのことを主題としています

人の世の中では実に様々な悲劇がありましたし今もあります
第一次世界大戦では戦闘員900万人以上と文民700万人以上が死亡しました
そのわずか21年後に始まった第二次世界大戦ではそれをはるかに上回る人が死にました
両大戦ほど大規模ではない悲劇は人の歴史の中で数え切れないほど繰り返されてきました
そのただ一つについても神が乗り出してきて人を救済したということはありません
神は人間の願いを聞き届け実現するために存在するわけではないのです

信仰とは人として生きるうえで宗教の規範を受け入れ実践することでしょう
そうすることによってより良い暮らしができより良い社会になると信じるからです
一方で厳しい暮らしや望ましくない社会の改善を願っても神は沈黙したままです

健康や長寿、受験や就職、良縁などなどありとあらゆることで人は神頼みします
神は沈黙をもってこれにこたえるのです

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