2023年8月8日火曜日

『大江戸リサイクル事情』石川英輔


今からちょうど30年前にわたしは新潟にある茅葺き古民家の修理を始めました
その当時日本経済はバブルがはじけて先の見えない不況に突入していました
経済成長一辺倒の暮らしの失敗とその反動から江戸という時代が見直されていました
その頃に石川さんはこの本を書きました
石川さんは成長頼みから脱却し江戸に学んだ持続的経済への転換を訴えました

江戸時代の日本では食料もエネルギーも完全に自給されていたのです
鎖国していましたからね
自給だけでなくあらゆる物は極限までリサイクルされほとんどゴミのない社会が実現していました

この本が書かれてから30年が経ちましたが何かが変わったでしょうか?

食料自給率(カロリーベース)は43%から38%とさらに5%も低下しました
1日3食のうち2食は海外から出前をとっていることになりますw
国土の狭い他の先進国と比べても圧倒的に低い自給率です!(イギリス63%、イタリア60%)

エネルギー消費(一次エネルギー消費量)は世界第4位だったのが第5位になりました
経済的な地位は大幅に低下したのにエネルギー消費はだけは依然として上位です
原油や天然ガスの輸入価格が高騰し電気、ガス、ガソリン、石油の価格に影響しています
この状況を追い風に国民の間に原発依存の傾向が強まっています

つまり30年前より食料自給についてはさらに悪化しています
エネルギーに関しては足踏みしていますが改善の見通しは全く立っていない状況です
それに加えて世界的な気象の危機が将来を一層暗く見せています

このような現在地に立って自分に何ができるでしょうか?
まずはこの本で印象的だったことを心にとめて自分の生活を見直してみるしかない

どのような根拠か明示されていないけれどこうなのだそうです

「かつての稲作農家では、収穫した藁の20パーセントぐらいで日用品を作り、50パーセントを堆肥や厩肥などの肥料とし、残りの30パーセントを燃料その他に使った。燃やしたあとの藁灰もカリ肥料になった。100パーセント利用し、いずれはすべて大地に戻した。完全リサイクルしていたのである」

「昔の農家では、1人1年間に、背中当てと蓑が各1着、藁草履が15足、草鞋が10足ぐらいの割合で必要だった」

「蓑を1着作るのに3~4日、藁草履は、慣れた人なら1日かかり切りで20足、草鞋は15足ぐらい作ることができたという。自家用以外は、もちろん現金収入を得るために売ったのである」

「江戸時代の日本人が使っていたエネルギーは、一人当たりせいぜい今の百分の一程度にしかならない。おまけに、人口は現在の四分の一の三千万人で、江戸時代を通じてほとんど変化しないから、エネルギーの総使用量は、現在のわずか数百分の一程度だった」

「本当のリサイクル社会は、江戸時代のように人間が自分の肉体を主な動力源とすることまで含めて完結するのではないだろうか」

ところでこの本の中で興味深い記述を見つけた
製糸の<繰り糸>という工程でミゴ箒が使われるのだ
湯の中に出た繭糸の端(緒糸)をミゴ箒で引っ掛けて取り出すらしい

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