2023年8月20日日曜日

『最強脳』アンデシュ・ハンセン

以前にハンセンさんが書いた『スマホ脳』という本を読みました
多くの人が愛用するスマホがどれほど人体に悪影響があるかを医学的に解説した本です
なのでまたスマホの弊害について書かれた本かなと思いました

ところがそうではなかったのです
ハンセンさんはこの本でひたすら「脳を強くするために運動をしよう」とすすめているのです
そのことが子供向けの本のようにとてもわかりやすく書かれています
それもそのはずです
この本はハンセンさんの『一流の頭脳』を子供向けに書き直した本だからです

ではなぜ運動をすると脳が強くなるのか?
そのためにどんな運動をしたらいいのか?

適度な運動をしたあとはふだんよりも集中力が高まり発想力が豊かになります
運動してスッキリした後に何かすると以前よりも良くできるような気がすることがあります
これを習慣化して定期的に適度な運動をすると脳はどんどん活性化されていきます

ずっと大昔に人類は進化の過程でこのような脳の仕組みを獲得していたのです
それはまだサバンナで暮らしていた頃に長い時間をかけて形成されたのでした
私たちは現代でもそのような脳の仕組みのもとで生きているのです
ハンセンさんも私もあなたもw

人類の脳は1万年前と比べてほとんど進化していないのです
ところが産業革命以降わずか数百年の間に私たちの生活は激変しました
その変化を私たちは知っているとしても脳の仕組みはその変化に追いついていないのです
なので脳を強化するには人類の多くがまだ狩猟採集をしていたころの習慣が役立つのです

最強脳のための運動は次の条件に当てはまるものが好ましいとされています
頻度は週に3回程度で一回につき30分以上の時間の運動です
運動は何でもかまいませんが心臓がドキドキする程度の強度を維持する必要があります

じつはハンセンさんがこの本で言っていることを私はすでに10年近くやっています
ハンセンさんの本を読んで始めたわけではなくて自分の生活習慣としてです
ざんねんながらそれで私の脳が劇的に強化されたとまでは思いません
ただ運動をした後に頭を使うのが私にとって心地よい習慣であることは疑いありません

2023年8月13日日曜日

一行レシピ 枝豆


枝豆を洗い300g当たり水1.5Lに塩大匙1入れ沸騰させ枝豆入れ再沸騰2分茹で湯切り塩まぶし

2023年8月8日火曜日

『大江戸リサイクル事情』石川英輔


今からちょうど30年前にわたしは新潟にある茅葺き古民家の修理を始めました
その当時日本経済はバブルがはじけて先の見えない不況に突入していました
経済成長一辺倒の暮らしの失敗とその反動から江戸という時代が見直されていました
その頃に石川さんはこの本を書きました
石川さんは成長頼みから脱却し江戸に学んだ持続的経済への転換を訴えました

江戸時代の日本では食料もエネルギーも完全に自給されていたのです
鎖国していましたからね
自給だけでなくあらゆる物は極限までリサイクルされほとんどゴミのない社会が実現していました

この本が書かれてから30年が経ちましたが何かが変わったでしょうか?

食料自給率(カロリーベース)は43%から38%とさらに5%も低下しました
1日3食のうち2食は海外から出前をとっていることになりますw
国土の狭い他の先進国と比べても圧倒的に低い自給率です!(イギリス63%、イタリア60%)

エネルギー消費(一次エネルギー消費量)は世界第4位だったのが第5位になりました
経済的な地位は大幅に低下したのにエネルギー消費はだけは依然として上位です
原油や天然ガスの輸入価格が高騰し電気、ガス、ガソリン、石油の価格に影響しています
この状況を追い風に国民の間に原発依存の傾向が強まっています

つまり30年前より食料自給についてはさらに悪化しています
エネルギーに関しては足踏みしていますが改善の見通しは全く立っていない状況です
それに加えて世界的な気象の危機が将来を一層暗く見せています

このような現在地に立って自分に何ができるでしょうか?
まずはこの本で印象的だったことを心にとめて自分の生活を見直してみるしかない

どのような根拠か明示されていないけれどこうなのだそうです

「かつての稲作農家では、収穫した藁の20パーセントぐらいで日用品を作り、50パーセントを堆肥や厩肥などの肥料とし、残りの30パーセントを燃料その他に使った。燃やしたあとの藁灰もカリ肥料になった。100パーセント利用し、いずれはすべて大地に戻した。完全リサイクルしていたのである」

「昔の農家では、1人1年間に、背中当てと蓑が各1着、藁草履が15足、草鞋が10足ぐらいの割合で必要だった」

「蓑を1着作るのに3~4日、藁草履は、慣れた人なら1日かかり切りで20足、草鞋は15足ぐらい作ることができたという。自家用以外は、もちろん現金収入を得るために売ったのである」

「江戸時代の日本人が使っていたエネルギーは、一人当たりせいぜい今の百分の一程度にしかならない。おまけに、人口は現在の四分の一の三千万人で、江戸時代を通じてほとんど変化しないから、エネルギーの総使用量は、現在のわずか数百分の一程度だった」

「本当のリサイクル社会は、江戸時代のように人間が自分の肉体を主な動力源とすることまで含めて完結するのではないだろうか」

ところでこの本の中で興味深い記述を見つけた
製糸の<繰り糸>という工程でミゴ箒が使われるのだ
湯の中に出た繭糸の端(緒糸)をミゴ箒で引っ掛けて取り出すらしい

2023年8月1日火曜日

『江戸に学ぶエコ生活術』アズビー・ブラウン


コロナ禍やウクライナへのロシアの侵略などの影響で物の流通が世界的に滞っています
食料やエネルギーだけでなく希少金属や水に至るまで自国で充足するのは困難な時代です
鎖国をしつつ人口を2.5倍にした江戸という時代が世界から注目されるのは当然でしょう

この本が書かれたのは2011年でもう出版から10年以上経過しています
それでもなお売れ続けています
それはこの本が長生きするだけの内容を含んでいるからにほかなりません

本の題名からはエコ生活のための色々なアイディアが書かれているのかなとの印象を持ちます
じっさいには現代生活に直接適用できる具体的方法はほとんど書かれていません
それなのになぜこの本は今も売れ続けているのでしょうか?

ブラウンさんはサステナブルな江戸の成功は人々の精神的態度にあったと言っています

「・・・何よりも大きかったのは、この国に広く浸透し、あらゆる改善を導く原動力となった人々の精神的態度である。それは自然のメカニズムと、自然の本質的な限界に対する理解に根ざしたもの・・・」

そしてその精神的態度をつぎのように表現しています

「謙虚さを尊び、浪費を嫌い、協力による解決を求め、一人ひとりが必要な分だけを手に入れ決してそれ以上を求めない」

この本の中にはこのような精神的態度が江戸の暮らしにどう表れていたか書かれています

ひとつの例として茅葺き屋根をあげています

「日本の茅葺き屋根は、その設計や構造、作業の手順という点で、江戸の村社会とその価値観の縮図といえる。材料はほとんどただで手に入り、労働は共同で行い、屋根葺きの作業のプロセスにはリサイクルによる資源循環が多くみられる」

わたしたちはこのような実例をまず理解して自分たちの生活を見つめなおすことが第一です
そうして初めて現代のエコ生活術を実践する素地が整うのです

このようにだいじなことを説いたのでこの本は今も巷間に流布しているのでしょうね

ブラウンさんはそのほかにも重要なことを指摘しています
サステナブルな江戸という時代のネガティブな面です
それは人権にかかわることです

ひとつは嬰児殺しです
食料が乏しい時代には家族が増えることは家族全員の飢えにつながりました
そこで養えない子は生まれてすぐに殺して家族の人数を抑制したのですね
それは犯罪ではなく仕方ないことだと当時の世間では思われていたのです

もうひとつは士農工商+という身分制の社会です
それぞれにサステナブルに生きてはいたものの階層の壁は乗り越えがたいものでした

これらのことは頭の中にいつも置いておきたいと思います