わたしは将来高校の社会科教師になりたいと思って大学への入学を目指した。大学受験に一度失敗して浪人生をしている間に高校教師になる夢は早くも冷めてきた。浪人生活を支えるために新聞配達をして、新聞をよく読むようになったことが影響して、むしろ新聞記者になりたいと考えるようになった。
このように自分の将来像がぐらついてきたので、わたしの大学での勉学は腰の定まらないものになった。大学の授業科目はそれぞれがいろいろな方向を目指したものであって、どこかに焦点を絞るのはなかなか難しい。
そのような中だったが、大学三年から専門演習、いわゆるゼミとして小林茂教授の「日本資本主義の農業問題」に決めることができた。小林先生は整然とした授業をしていた。板書が、図表も含めて、きれいで説明が分かりやすかった。こういう教師のゼミであればさぞ楽しく学べるのではないかと思った。
ゼミを選択する基準は学生によりさまざまである。学生に人気のあるゼミは、勉学の負担が軽く、いい就職先が見つかりやすいゼミである。その点からいうと小林先生のゼミは学生に人気のないゼミだった。わたしにはそのようなことはあまり関係なかった。
わたしが5年間の学生生活でもっとも集中して勉強したのはこのゼミでだった。小林先生が認めたテーマについて、400字詰め原稿用紙50枚の論文を3年生と4年生の終わりにそれぞれ提出することになっていた。それまでそんなに長い論文を書いたことがなかったので、それを書き上げるのはきついことだった。
1977年度ゼミ論文 日本農村における「経済外的強制」
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