2026年10月14日水曜日

「ディスカバード・ジャパン」 大木 茂

小学二年生か三年生の時に、初めて東北にある生家に帰省しました
その時が初めての長い鉄道旅でもありました
この本を出した大木茂さんは、丁度その頃から鉄道の写真を撮り始めたのでした

それから60年以上の歳月が流れ、私は数えきれないほど鉄道旅を重ねました
その間、大木さんは鉄道の写真を撮り続けました

私の中にぼんやりと、しかし代えがたい記憶として残っている鉄道のイメージがあります
1960年代後半の山形県天童駅のホーム
真っ黒な蒸気機関車が白煙に包まれて入ってきました
ゴッ、ゴッという地鳴りのような音をさせて迫ってくると、鋭い汽笛をピーッと響かせました
この本を見ていて、それをはっきり思い出しました
それは音や匂いや熱や振動など、感じられるすべてを伴った記憶でした

この本は沢山の今昔比較の写真とともに、大木さんの文が添えられています
それを読みながら、あちこちでの鉄道の記憶が呼び覚まされていくのを感じました
あの時に見た美しい日本は、もう写真の中にしか残っていないのです

あの頃の美しさは、人々の営みの気高さがもたらしたものでしょう
今より経済的には貧しかったけれど、心を込めて丁寧に生きていく姿勢がありました
この間、幸いにして戦争もなく、経済は拡大していきました
そして、今ある日本の隅々の景色は、比べようもなく荒んだものになりました

わたしたちは、これから先の世代に何を遺していけるのでしょうか?


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