2024年8月26日月曜日

『「自分」の壁』養老孟司


和田秀樹という精神科医が高齢者向けの本をたくさん書いています
和田さんはこのような本を月に(年にではなくて)5、6冊書くというのです
いきおい和田さんの本には内容に甚だしく重複があります

先日読んだ『60代からの見た目の壁』は目新しいところはほとんどありませんでした
ただその中にたしか和田さんの師匠は養老孟司だと書いてありました
(間違えていたら済みません)
それで養老さんの本を読みたくなりました

この本の中で目にとまったのは2か所です

養老さんは現実をしっかりと見るために自然に接することをすすめています
「頭が良くなりたいならば、自然のものを一日に10分でいいから見るようにしなさい」

新潟の一入亭には夏の間に雑草がおびただしく生えます
今日は午前中にそれを2時間ほどながめました
雑草も自然ですよね

雑草をながめたのは草刈りをしたからです
草刈りをしている間にいろいろとりとめもないことを考えました

・ここに生えている草の中には以前よりもツタ類が増えたな
・となりの錦鯉の養殖池の周りはまた除草剤がまかれて草が枯れているな
・あの池を再び田圃に戻したときに除草剤の害はないのだろうか
・道芝が元気に生えているのでこれは来年採取できるよう刈らないでおこう
・このごろはフキよりもシダの方が元気があるな

草刈りをして頭が良くなるのか分かりませんがいろいろ考えるきっかけになるのは確かです

もう一か所は自信の育て方です
人は社会で生きていけばいろいろな問題にぶつかります
その問題から逃げずに取り組んでいけばやがて自信を持つことができると養老さんは言います

「(社会で生きていけば)なにかにぶつかり、迷い、挑戦し、失敗し、ということを繰り返すことになります。しかし、そうやって自分で育ててきた感覚のことを「自信」というのです」

なんか詩的ですてきじゃないですか?

2024年8月21日水曜日

『デジタル・ミニマリスト』カル・ニューポート

本を読むきっかけはいくつかあります
きっかけとして多いのは、
・新聞の書評を読んで
・本や新聞の記事に言及があって
・図書館に陳列してあって
などです

ひとつふしぎなことがあります
本を読み終わる頃にはその本を読もうと思ったきっかけは大抵忘れているのです
この本もそうでした
ああ面白かった!と読み終わったのに

なんでこんなことにこだわるか分かりますか?
もっともっとたくさん面白い本を読みたいからです
どうしたら面白い本に確実に出合えるか知りたいからです


さてこの本のどこが面白かったのでしょうか?
それはカルの意見には共感するところが多々あったからです

カルはまず自分が人生で何をしたいのかはっきりさせようと言います
そうしなければデジタル・ミニマリストになるのは困難だからです
スマホの虜になってしまうのは他にやるべき大切なことがないからです

人が幸せに生きていくためには孤独の時間が必要です
スマホはその時間を奪ってしまう
その時間を奪い取るのはGAFAです


読んでいて嬉しいことが二つありました

一つは『ニコマコス倫理学』への言及です
わたしのブログのあらゆる投稿を注意深く読んでいる人(わたし以外にいないでしょうけど)
には明らかなようにわたしは『ニコマコス倫理学』の信奉者です

カルがニコマコス倫理学から引用した考えは次のようなものです

「善い人生には、その行為そのものから生まれる満足感以外に何の利益をもたらさないような活動が必要である」

これをカルは「質の高い余暇活動」と呼んでいます
そのような活動に勤しむためにはそれを可能にするだけの原資がなければなりません
それでほとんどの人はまず経済=収入を得ることに没頭します

そして幸運にもそのような原資を手にできたとして没頭する何かはあるのでしょうか?
その何かが無ければその人は「質の高い余暇活動」はできません
利益をもたらす活動に成功したとしてもその後に虚ろな人生が待っているでしょう


嬉しかったことのもう一つは「質の高い余暇活動」として手仕事を推奨していることです
スキルを活かし、物質的な世界で価値あるものを作り出す
デジタルのスクリーンを離れてリアルに何かを形作ること

これはふだんわたし自身が心がけているところです
手仕事に没頭するとスマホなどをいじろうという気が無くなります
得られる満足感がまったく違いますから
もっともわたしはいわゆるガラケーを使っていますからこの問題はありません

そのガラケーを支えている3Gというシステムが2026年で廃止になります
そのためガラケーは使えなくなるそうで迷惑な話です
わたしはガラケーで不便ありませんでしたから

でもカルの書いていることを読んで気が楽になりました
通話とテキスト・メッセージだけが利用できるガジェットを選べばいいだけのことですね
スマホもパソコンも自分の人生の目的に合った最低限の使い方をすればいいのです