この本の良いところ
これまでの考えが整理できてこれからの指針になる
論拠になる本がたくさん示されている
それらをピックアップしてみます
「彼らは荒野をつくり、それを進歩と呼んだ」アグリコラ30節を踏まえて
彼らとは誰だろう
彼らとは例えばスマホの新製品を開発・販売して金儲けし得意になっている人たち
その製品によって人々の暮らしは一見楽になったり便利になったりした
それによってわたしたちの生活は進歩したのでしょうか
実は人々の暮らしは修復不可能なほど変質してしまったのです
『資本主義に万歳二唱』アーヴィング・クリストル資本主義には万歳を三唱するほどの価値はないということ
なぜか?
資本主義は物質生活を向上させ個人の自由を増大させた
これで二唱
一方で資本主義は「心理的な重荷」を個人と社会秩序に押しつけもした
なので万歳は二唱までということです
日本人の精神危機の二側面
・「実存に関わる人間的欲求」を大いに満たしていた生活様式の抑圧と転倒があった
・近代への移行がたった一世代のうちに、いわば激烈シャク烈のうちになされた
『言の葉の樹』アーシュラ・ル=グウィン
ル=グウィンが行なう描写は、1853年と1945年のアメリカによる「侵略」直後の日本と奇妙な響き合いを見せているようにも思える。
『工藝の道』柳宗悦
民藝の美は個人ではなく社会にある、と柳は続ける。西洋の掲げる資本主義はこの美を破壊してしまう、なぜならば、その目的は貪欲に基づく利益の追求だからである。資本主義は人を競争の海の中に投げ込み、心を犠牲にする。
現代日本の生活における禅と工芸の本質的な役割
・日常生活における美と官能性の存在。美意識の高さ
・配慮、注意深さ、几帳面さ
・価値観や習慣における過去との連続性。
さらに伝統工芸の現代的デザインへのつくり変え
これを「古きものの(アルカイック)モダニズム」と名づけよう
益子でとても有名な一家の方が言ったこと
「問題は、過去を今意味のあるものにすることができるのかということです」
「益子を新しく引っ張っていく人が必要なんです」
『日本文化における時間と空間』加藤周一
ユダヤ・キリスト教的な前進する時間は日本人には意味をなさない
日本人にとって時間とは、継起していく現在、今に他ならない
過去の事件の全体が現在の意味を決定するのではなく、また現在が特定の未来へと向かって流れているのでもない
それぞれが今の時間軸における現実の中心であり、物事が把握されるのは今においてのみなのである
「同時に野蛮の記録ではないような文明の記録は存在しない」ヴァルター・ベンヤミン
禅や工芸、永遠の現在といったものはつねに歴史の文脈のなかに姿を現わす
また、歴史の文脈によってかたちづくられ、影響される
そこでより大きな構図を見る必要が出てくる
そこでは必然的により暗鬱な主題が含まれてくる
すなわち禅の伝統の「可塑性」あるいは道徳観念の欠如の作用
『おくりびと』『次郎は鮨の夢を見る』
日本では尊敬すべき理想として職人が生きながらえている
『「甘え」の構造』土居健郎
日本人の生活の決定的特徴は甘えにある
甘えとは、周りの人に好かれて依存できるようにしたいという、日本人特有の感情(ウィキ)
日本人の過去へのノスタルジーの強さ
先進国へと発展する過程でおそらく最も傷をおった国であり
その進展の速度がすさまじかったために、もっとも神経症的である
『お役所の掟』宮本政於
日本の順応主義の本質とその代償とをドラマティックに描き出した
堺屋太一が言う日本における美徳とは
内容のいかんを問わず、支配的な体制が「良し」とするもの、つまり多数派が正しいと認めるもののこと
『容赦なき戦争』ジョン・ダワー
人種が太平洋戦争の重要な要因であったことに関して最も説得力のある主張をしている
マーシャル・マクルーハンの指摘
もし魚に自分の環境の最もはっきりした特徴は何かと尋ねたならば、その魚が話すことができたとして、最もありえないのは「水」という答えだろう
我々の世界観、無意識のプログラムというのは、この「水」であり、みながその中で泳いでいるのである
朝日新聞1951年4月12日付社説
マッカーサーが日本を離れる時、マッカーサーが日本人に民主義の良さを教えてくれたと(皮肉抜きで)称賛している
『アメリカはなぜ失敗したのか』モリス・バーマン
今日のアメリカ帝国は崩壊している
『ニヒリズム』グラハム・パークス
東京のような近代都市では、誰しもが生存と気晴らしの欲求に突き動かされているため、すべての核心に関わる問題は表層からそれほど遠くないところにある。
『名人』川端康成
第二次大戦の日本の敗戦、より大きな意味では効率を優先する科学的世界に対する伝統的・直観的世界の敗北のアレゴリーを提示した
ニューヨーク・タイムズにおける加藤典洋の二つの提案
・日本の若者は終わりなき成長という夢を諦め始めており、「ある種の成熟」へと近づきつつある(2010年)
・日本がポスト成長時代に足を踏み入れたかもしれないという感覚の緩やかな出現(2013年)
日本とアメリカのちがい
日本には拠り所となる一貫した伝統があるということだ。米国にはそれがない。
仏教経済
江戸時代の日本は、物品も原材料も限られていたため、リサイクルせざるを得なかったのだ
『Everyday things in premodern Japan』Susan Hanley
江戸時代の思想(イデオロギー)は、長期的視野で見た資源の最適利用であって、短期的に見た資源の最大利用ではなかった
そうしてできたのが、ある特殊な豊かさ、手元にあるモノを最大限利用することで生まれる「耐乏のなかの贅沢」であった
美と贅沢は、豊かさのなかにではなく、簡素であることのうちに、洗練されたデザインのうちに見いだされる
「質実や質素という観点から贅沢を定義することで」「より多くの人々が高水準の身体的健康を得ることができるようになった」
江戸時代の日本は究極の「より少ないものこそより豊か(レス イズ モア)」文化だったのである