2018年9月29日土曜日
『現代社会はどこに向かうのか』 見田宗介
大上段に構えた書名に一瞬引いてしまいます
岩波新書でこの著者であればこのようなテーマとなるのでしょう
持った感じはとても軽いのですが(全体で162ページ)内容は重たいです
高度成長期を担った世代と脱高度成長期に人間形成した世代の精神をデータで比較してます
すると新しい世代の精神につぎのような特徴が浮かび上がるといいます
・近代家父長制家族の解体
・結社闘争性の鎮静、保守化
・魔術的なるものの再生
近代から現代にかけては合理化をめざす、戦いを原理とする社会でした
それから脱した現代では合理化圧力は解除あるいは減圧されています
これにより自由と平等を実現する道が開かれています
魔術的なるものの再生とはメタ合理性のことです
合理性の限界を知る合理性こそ真の合理性です
あえて合理性を破砕して、反射や衝動や情念の効用に身をゆだねる
午後の時間の停止する陽射しを浴びる空間のように、あえて静かな恍惚に身をゆだねる
生活スタイル、ファッション、消費行動の変化のキーワード
・シンプル化
・ナチュラル化
・素朴化
・ボーダレス化
・シェア化
・脱商品化
・脱市場経済化
経済的には縮小しましたが、経済に依存しない幸福の領域は拡大しています
経済成長の完了(終了)したのちの社会
一般的な予測 ⇒ 停滞した不幸な社会
新世代の実態 ⇒ 幸福イメージの倒錯*から解放されて多様な原的な幸福に対する感受能力を獲得し増強しています
*幸福は経済的な富の増大とともに高まるというイメージ
現代社会では二つのベクトル(力の方向線)が拮抗しています
・高原効果:人間の幸福を着実に底上げしていく力
・テロリズム効果:積み残した未解決の社会的な諸矛盾*が引き起こす不安
*帝国主義、植民地支配、ネオ・コロニアリズム、中東分割、移民による経済成長、差別と格差、憎悪の連鎖等
高原
生産主義的、未来主義的な生の合理化=現在の空疎化という圧力から解除されることによって、あの<幸福の原層>と呼ぶべきものが、この世界に存在していることの<単純な至福>を感受する力が、素直に解き放たれることをとおして、無数の小さな幸福たちや大きな幸福たちが一斉に開花して地表の果てまでおおったところ
持続可能な幸福の世界
他者や自然との<交歓>という単純な祝福を感受する能力の獲得をとおして、<現在>の生が、意味に飢えた目を未来にさしむける必要もなく充実してあることによって初めて可能である、どのような資源の浪費も環境の汚染も必要としない世界
サルトル「存在と無」
「所有」というコンセプトを、偏狭なホモ・エコノミクス的「所有」の観念から解き放っている
ダニエル・エヴェレット「ピダハン」
ピダハンがこの地上において富める者たちであるのは、彼らが<交歓>の対象としての他者たちと自然たちという、涸渇することのないしかたで、全世界を所有しているからである
「現代」に固有の二重のリアリティの喪失
加速に加速を重ねてきた走行の果てに、突然目的地に到達して急停車する高速バスの乗客のように、現代人は宙を舞う
経済競争の脅迫から解放された人間の幸福=永続する幸福
・アートと文学と学術の限りなく自由な展開
・歌とデザインとスポーツと冒険とゲーム
・知らない世界やよく知っている世界への旅
・友情
・恋愛と再生産の日々新鮮な感動
・子供たちとの交歓
・動物や植物たちとの交感
・太陽や風や海との交感
転回の基軸となるもの
・幸福感受性の奪還・再生
・感性と欲望の開放
・存在するものの輝きと存在することの祝福に対する感動能力の開放
自由と魅力性による勝利
2018年9月17日月曜日
2018年9月16日日曜日
『お金2.0』 佐藤航陽
私と私を取り巻く日本人男性の退職前後の人生になぞらえてこの本を解釈してみました
退職前
資本主義の原理原則である経済性、効率性、費用対効果、有用性を第一として生きています
これは戦後の復興期から高度経済成長期にかけて生まれた価値観です
非営利組織や個人で働いていたとしても原則は資本主義的であることに変わりありません
この世代は貧しさから抜け出して物質的に裕福になることが人生の目的でした
お金が欲しい、美味しいものが食べたい、家を建てたい、などです
いまの日本では人口減少、経済成長の鈍化により資本主義は行き詰まっています
カネ余りで預金利子はマイナス、モノは売れず景気は低迷しています
そのことを肌身で感じ退職後はこれまでと違う生き方が必要と考えています
ではどのように生きたらいいのか
それが分からないので退職は一日延ばしになります
資本主義が機能不全を起こしている時代にその価値観を引きずって生きるのは危険です
退職後の人生まで資本主義と同じように行き詰まり低迷する運命になるからです
いさぎよく退職し自分の中にある資本主義原則をまず強制終了させなければいけません
退職後
退職したら自分自身の発想から資本主義の要素を可能な限り払拭することに努めます
そして資本主義の枠組みでは無視されてきた価値に意識的に注目するようにします
このように価値を中心とした世界を価値主義といい資本主義の欠点を補完する働きをします
価値は物質的価値、内面的価値、社会的価値の3つに分類できます
物質的価値つまりモノやカネは人の欲望を満たす実世界の中心をなしています
これをどこまでも追及するのが資本主義です
しかし人はもう十分豊かになり物質的価値への憧れはしぼみました
内面的な価値とは精神的で目に見えず、かつポジティブな感情をいいます
愛、共感、信頼、感謝、好意など人間の精神にとって高い効用がある価値です
物質的に豊かになることに無心だった世代は内面的な価値を認識しにくい傾向があります
このため内面的な価値を高めることにあまり関心を持っていません
社会的な価値は個人ではなく社会全体の持続性を高めるような普遍的活動です
いま多くの人が内面的な価値の重要性を感じており経済を動かす原動力になっています
このような時代に自分の内面的な価値を高めるにはどうしたらよいでしょうか?
自分自身と向き合い自分の情熱を発見し自らの価値を大事に育てていくことです!
自分と向き合うということは自分が何をすることが本当に好きなのか探すことです
自分自身が一日中やっていても何日続けても飽きないことを見つけることです
価値主義の世界では好きなことに熱中している人ほどうまくいきやすいからです
自分が熱中できることが見つかるまでの速さは人により差があります
すぐに見つかる人となかなか見つからない人がいます
自分の情熱のありかがなかなか見つからないのは心がサビている人です
心がサビたのは長い資本主義の人生ですっかり情熱のありかを見失ってしまったからです
自分が興味を持ち熱中していたことがいったい何だったかを忘れてしまった人です
このような人はまず心のサビを削り落とさなければなりません
できるのであれば一人旅をすることです
一人でぼんやり過ごす時間には自然に自分自身との対話がはじまります
自分の過去・現在・未来にかかわることが勝手に頭の中に浮かんできます
旅の中で出会う人々との会話やめずらしい景観や食べ物などがそれを一層かきたてます
こうすることで心のサビがはがれていき忘れていた情熱が顔をのぞかせはじめます
それを糸口に細い道を辿っていけば自分の情熱の原泉に至ることができます
その泉こそ自分の価値が湧き出るところです
自分の情熱のありかは分かりました
つぎはこの情熱を大事に育てていきます
大事にとは共感と熱中ができ信頼がおけ好意と感謝の気持ちが持てるようにすることです
育てるとは自分なりの価値の枠組みを作ることです
それには事業戦略、CSR、ブランディングが必須です
このようにして自分の価値を高めておきます
自分の価値を高めておくとなぜいいのでしょうか?
自分の価値を高めておけば何とかなる世界が実現しつつあるからです
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