2019年10月30日水曜日

『洞窟おじさん』 加村一馬


わら細工のサークル仲間と昼ご飯を食べていた時のことでした
「洞窟おじさん」という本が面白かったと何人かの人がいっていました
家出をした少年がどうやって長いあいだ独力で生きて来たか書いてあるそうです
さっそく川越市立図書館で借りてきて読みました

親からの虐待と学校でのいじめを避けるため彼は13歳で家出しました
そして足尾銅山の洞窟でひとりで暮らしはじめたのです

その経験は狩猟採集生活そのものだと思いました
人類が定住して農耕生活を始める前の、食べ物をもとめ遊動していた1万年前の生活です

テレビやラジオがないだけでなく新聞や本も読まない生活です
その生活はできる限り食料を求め、安心して寝ることでほとんど占められていました
食欲と睡眠欲を満たすことにほぼ全力を尽くしていたのです

空腹を満たすために食べられるものは何でも食べる
大きな獲物が穫れたら腹いっぱい食べ、残りは保存する
食料が得られないときはコウモリやネズミまで食べる

そんな彼も社会に触れると生活だけでなく心や身体まで変わっていきました
自分がなんのために生きているのか分からなくなり自殺しようと思ったこともありました
孤独な自給自足生活者から社会生活者へと変わっていったのです

転機は彼の気質と体質がすっかり変わってしまったことによって訪れました

ひとつは食料を買うために自動販売機をこわして現金を盗もうとしたこと
ひとつはむかしのように長いあいだ空腹を我慢することができなくなったこと

もう彼は狩猟採集の生活をできなくなってしまったのです

いま地球環境が激変しています
自然環境だけでなく、人間が作り上げてきた経済社会環境も危機的な様相を示しています
これからひとはサバイバルの時代に突入するかもしれません

加村さんが辿ったのと逆の道をひとは歩むことができるでしょうか?

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