2016年12月2日金曜日

冬迎(ふゆむかえ)

こんにちは、一入亭の藁竹茅です。

毎年11月の勤労感謝の日のころに一入亭の冬迎(ふゆむかえ)をします。
これは一入亭が冬を迎えるための準備です。

年によって前後しますがこのあたりでは12月中旬に根雪になります。その
後はシベリアからの寒波が日本列島に押し寄せてくるたびにずんずんと
雪が積み増します。雪がいちばん深くなるのは2月です。大雪の年には
3メートルを超えることもよくあります。3月の声を聞くと降る雪がへり、融ける
雪がふえます。そして春分の日のころに春を迎える準備=春迎(はるむかえ)
をします。暖かい春の陽がどっさり残った雪のうえにそそぐ日にやります。

冬迎の内容は屋根へのシート掛、家の戸・窓への囲い板、植木の養生です。
春迎はそれらを取り外す作業です。

シート掛
これは茅葺屋根をすっぽりとシートで覆ってしまうことです。
なぜそんなことをするのかというと雪が茅葺屋根を痛めるからです。

一入亭の軒(屋根の下端)の高さはおよそ3.6メートルです。大雪の冬には
屋根から落ちた雪と風下に吹きだまった雪が加わって屋根の半分ぐらい
まで雪に埋まります。これが茅葺を痛める原因になります。

雪が茅葺屋根を痛める具体的なパターンにはおもにつぎの3つです。
1 茅葺屋根に凍結した雪が落下する際に茅を引き抜く
2 屋根まで積もった雪が下に引っ張られて軒先を曲げる
3 除雪の際にスコップやスノーダンプで茅を削ってしまう

夏場は大雨や強風で屋根が傷みますが、冬場もそれと同じかそれ以上に
茅葺屋根にとって厳しい季節といえます。

一入亭の屋根は喜多村暁さん(2010年に他界)という屋根職人がずっと
補修してきました。この方が茅葺屋根を雪から守る方法=シート掛を考案
しました。

正方形や長方形のシートをそのまま中門づくりの茅葺屋根に掛けたのでは
屋根の凸部や凹部に掛けたシートが風をはらみ雪をため込んで破れます。
喜多村さんはシートを屋根の形状に合わせて縫製して掛けるようにしました。
シートは破れにくくなり長い冬のあいだを通じて風や雪から茅葺屋根を守れる
ようになりました。

喜多村さんが亡くなったあと昨冬まではこのシート掛を地元の屋根職人に
お願いしてきました。それを今冬からは自分でやることにしました。

シートの縫製
ことしの春迎のときに前後の中門の先端に掛けるシートが
長年の使用であちこち破損していました。シートの寸法を測ったうえでそれらを処分しました。今冬のシート掛ではその部分のシートを自分で縫製して使うことにしました。この際ブルーシートはやめて銀色のUVシートを使うことにしました。シートを寸法どおりに裁断して家にあった古いミシン(ジャノメ トピアエース802 1973年製)で縫いました。


右の図が前中門の左側に掛けるシートの図面です。数字の単位がメートルですのでけっこう大きいことが分かると思います。このほか前中門の右側、後中門の左右と全部で4枚縫いました。


一入亭のチャノマ(17.5畳 6.3m×4.5m)にシートをいっぱいに広げて裁断し、縫いました。針は14番、糸は30番のスパンミシン糸ジーンズ厚地用です。












シート掛の作業
<道具>
ハシゴ(大)、ハシゴ(小)、ロープ(ポリエステル ダブルブレード10㎜×40m)、アッセンダー、カラビナ20コ、ハーネス、鋏、金槌
<材料>
シート、PP縄(6㎜)、トタン釘
 
ハシゴ(大)を軒端にかけ、さらにその上にハシゴ(小)をグシ(屋根の上端)に届くようにかけます。ハシゴ(小)の下端はハシゴ(大)に、上端はグシの番線にPP縄で結びつけます。



グシにのぼりグシの上に安全確保用のメインロープを渡します。方法はグシの番線にカラビナをかけ、そこにメインロープをクローブヒッチでつないでいきます。ハーネスにつけたセルフビレー用のロープをこのメインロープにカラビナでつなげます。万一転落した場合はメインロープが食い止めてくれるはずです。




シートは上端をアングルに結びつけるかトタン釘でグシに打ち付けます。グシをシートで覆えないところにはシートを切って作ったグシカバーを掛けます。シートの下端は軒下の木部に打った釘にPP縄で固定します。

このあと戸・窓へ囲い板をかけ、植木(サクラ・モミジ・ナンテン)の養生をして冬迎は終わります。

冬迎の作業時間(一人でやった場合)
道具・材料の準備=半日
シートの縫製(4枚)=1日
シート上端掛け=1日
グシカバー掛け=半日
シート下端縄掛け=半日
囲い板掛け=半日
植木養生=半日


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