それは10年越しの夢がかなったから
月の砂漠をラクダで旅する
前のラクダにわたしが乗り
うしろのラクダにはユカが乗る
行方には果てしない海が広がっていて
このままどこまでもゆけると思う…
これは夢がかなったあとに見た夢
ほんとうの夢はサーフィンができるようになること
サーフィンができるということのわたしの定義は
サーフボードの上に立って波に乗ることだ
この時に波は絶えず浜に向かっており
ボードはその波とともに移動しており
わたしは微妙なバランスでボードの上に立っている
そういう状態だ
そのような状態に身を置きたいと永いこと願っていた
ところがある時は安物のボードがいうことを聞かず
またある時は何度も何度も意地悪な波が来て
もみくちゃにされた挙句に海水をたっぷり飲んだりした
それらすべてにうんざりしたある日
それはじつは昨日のことだったのだけれど
長いボードを持ってまた浜に出かけた
何回目かのトライの時に
テイクオフしようとしたわたしの腰を
誰かがそっとやさしく押してくれた
気がした
このようにして久方のささやかな夢は達せられた
ありがとう、海